一部の人だけのものではない 目指せ日本型テレワークサイボウズ流の働き方(2/3 ページ)

» 2013年04月04日 08時00分 公開
[野水克也,サイボウズ]

野水 サイボウズの場合、社員の何割かは裁量労働制で働いているので「ウルトラワーク」のような時間と場所の制限を取り払った勤務制度は試しやすかったのですが、田澤さんの会社ではあえてそれをされなかったのですか。

田澤 正直に言うと、裁量労働制やみなし労働時間制の方が管理の手間は少なくなると思います。しかし、日本の会社は大半が時間労働制ですから、当社がそれを実践していないと、より多くの会社にテレワークを伝えにくいことになり、ハードルが高い思われてしまいます。

 そこで当社は、あえてほぼ全員を時間労働制としています。テレワークではありますが、例えば、時間帯と関係なく都合のいい時間に少しずつ積み上げた仕事でも、ちゃんとその細切れの時間を数えます。

野水 とても面倒そうに思いますが、実際にはどうやっているのですか。

田澤 「Fチェア」という自社開発の時間管理ツールを使って、在席して仕事を開始してから、途中に退席するまでを全部記録しています。在宅と同様に事業所に出社している社員も同様に管理していますので、勤務場所にかかわらず、同じ管理方法ですね。

 在席状況を逐次記録するので、例えば、子どものお迎えなどで1時間抜ける場合は、夜の9時から10時までという形で穴埋めする働き方でも大丈夫です。在席状況の切り替えは自己申告のため、「虚偽申告をする人もいるのでは?」と言われることもありますが、仕事をしている間は作業画面がキャプチャされる仕組みになっています。1時間にランダムなタイミングで5回程度キャプチャしてますから、画面が動かなかったり、仕事と関係のない画面を見ていたりという場合に、理由を説明しなくてはいけなくなります。

野水 監視されて息が詰まるという人が出るのではないか心配になります。

田澤 いえ、むしろ逆ですね。これは監視ツールという位置付けではなく、家にいても会社にいるのと同じように仕事のモチベーションを維持するためのツールだと思っています。上司の不安解消にもなりますし(笑)。カメラを設置しているところもありますが、顔が見えるといっても、仕事をしているかどうかは分からないものです。

 このツールを導入する前は、在宅勤務をする社員がアウトプットを出さないと怠けている思われるので、アウトプットを伴う仕事しかしない、あるいは、アウトプットを出すために夜中まで仕事をするということがあり、、それがテレワークで仕事をする社員のストレスになっていました。それでは、「むしろ会社に行ったほうが楽だ」「会社ならとにかくそこにいればいいから」ということになってしまい、テレワークが広がりません。

柔軟な働き方を実現する「フレックス賃金制度」(資料提供:株式会社テレワークマネジメント)

 この仕組みを取り入れたことで、社員も働いているということを上司に伝えることができるので、安心して働けるみたいですね。

野水 細切れの時間のカウントしたり、短時間勤務が混ざったりして毎月の業務時間が変わると、給与体系の設計なども難しくなりませんか。

田澤 テレワークをする意味は、働く機会の創出ですから、細切れでも短時間でも、できるときに働ける方が働く機会は増え、勤務体系のバリエーションもたくさん出来ます。ずっと在宅の人もいれば、事業所に常勤の人もいれば、短時間勤務の人もいれば、時間拘束ではなく都合のいい時間に仕事をして、合計でカウントする場合などもありますね。

 評価は、成果と勤務状況の両方で行います。給与体系は、基本的に月給制です。残業割増や深夜割増も普通の会社と同じようにカウントします。ただ、時間の制約を加味されますので、時給ベースの基本給にフルウィークやフルタイムなどの「働き方手当」を加えて、さらに、残業を付けたものが月額の給与となります。

野水 なるほど。この方法だと、時間拘束のある人も、事業所に行く人も、短時間の人も公平に算出できそうですね。あと、気になるのはやはりコミュニケーションですが、サイボウズのようにバリバリのITワーカーばかりではないのに、サイボウズよりもテレワークで働く人の比率がはるかに高いと思うのですが、その辺は問題ないのですか。

田澤 成果物や「ほうれんそう」などは、サイボウズ(グループウェア)などのITツールでやり取りできますし、逆に証拠が残すことができます。以前は、全員がインカムを持っていました。メッセンジャーなどを使って、リアルタイムに声掛けなどもできますし、これでカバーできるかと思ったんですが、何かが足りないと思い始めて……。

 例えば、私でも社員がどこにいるか分からないのは、何となく不安です。そのように「一緒に働いている感じ」がほしかったので、最近はバーチャルオフィスのツールを使っています。

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