イノベーション時代のビジネスをリードするITインフラの最適化は今こそチャンスIBM Pulse Japan 2013 Report(1/2 ページ)

モバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウド――企業のビジネスに劇的な変化をもたらしている4つのキーワードを取り込んでいくためのITインフラの最適化に、今こそ取り組むべきとIBMは提唱する。

» 2013年05月24日 19時05分 公開
[ITmedia]

 日本IBMは5月24日、サービスマネジメント分野における年次イベント「IBM Pulse Japan 2013/IBM セキュリティ―・コンファレンス 2013」を都内で開催した。基調講演では企業のビジネスに劇的な変化をもたらしているという、モバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウドの4つのキーワードをいかに取り込み、活用していくか――そのためのITインフラの最適化に今こそ取り組むべきだというメッセージが提唱された。

ITインフラのターニングポイント

ヴィヴェック・マハジャン氏

 まず登壇した日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当のヴィヴェック・マハジャン氏は、同社のソフトウェア戦略について、「世の中で起きている変化に企業が対応していくためのサポートを提供することがミッションだ」と説明した。

 顧客企業が同社に求めるのは、最新のテクノロジーと新たなマーケットの創造であり、ビッグデータの活用やスマーターシティといった新たなビジネスチャンスを次々に提供してきた。こうした新たなビジネスの創造は、上述の4つのキーワードによってもたらされており、マハジャン氏は、「IaaS、PaaS、SaaS、プライベートクラウドあるいはハイブリッドクラウドを本格的に利用していく時代に、IBMはその全てを提供できる。今や世界共通の課題となっているのが、ITインフラの最適化である」と来場者に呼び掛けた。

高瀬正子氏

 続いて登壇した同社ソフトウェア事業 Cloud & Smarter Infrastructure事業部 事業部長の高瀬正子氏は、グローバル化や人口増加、データの爆発といった社会情勢を背景に、「変化が激しく不確実な時代がいよいよ現実のものとなり、ターニングポイントを迎えた」と指摘する。

 これまでの情報システムにおいては、IT部門の活躍によって極めて質の高いサービスの提供が維持されてきた。それが、企業を取り巻くビジネス環境の劇的な変化によって、岐路に立たされている。この変化はマハジャン氏が触れたように、新たなビジネスチャンスを創造し、無限の価値を生み続けていくと期待される。それを受け入れるITインフラの最適化に、今まさに着手すべきであり、変化のスピードに追従していかなければならないという。

 高瀬氏は、IT部門が企業にとって既にコストセンターではなく、収益機会の拡大や顧客満足度の向上、意思決定の迅速化といったビジネス上の重要なポイントを実現する役割を担う存在になっていると語る。「ビジネスのスピードがますます加速し、データも爆発的に増えている中で、最適化されないままのインフラではこうしたチャンスを逃すことになる。世界中のインフラを最適化するタイミングにある」。ITインフラの最適化においては、変化をもたらす4つのキーワードをとらえながら、「オープン化」「可視化・コントロール・自動化」が重要になると強調した。

ダニエル・サバー氏

 米IBM 次世代プラットフォーム担当 CTO ゼネラルマネージャーのダニエル・サバー氏は、社会において既に新しいビジネスモデルやイノベーションが幾つも創造されているとしながらも、データの爆発的な増加やアナリティクスによって導き出される知見などが、さらなる複雑性をもたらすと警鐘を鳴らす。これらはイノベーションの継続的な創造を実現するものではあるが、ITインフラにおいては常に効率化への取り組みを要求し続ける。

 「まさしくそのバランスの確保が難しくなっている」とサバー氏。両者は相反するものではなく、共生関係にあり、融合していかなければならないという。「伝統的なトランザクションは無くならないし、内外のビッグデータを柔軟につないでビジネスモデルを創造することも必要だ。そこにチャレンジした者だけが勝者になれる」と述べた。

 ここではどんな観点からインフラにおけるテクノロジーを捉えていくべきか。セキュリティではネットワークのペリメータ(境界)を越えて情報を守るアプローチが必要になる。クラウドではワークロードが新しいサービスの展開の基礎となるだけに、可視性を高めてブラックボックス化を回避する。クラウドはまた、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドなど異種混在の世界となっているが、そうした個々の違いをオーケストレートしていく仕組みも必要になる。

 IBMは、例えば、ワークロードの最適化や障害の予兆検知の自動化をはじめとする高信頼のインフラ運用を可能にする知見を、IBM PureSystemsファミリーでは「パターン」として実装している。異種混在のインフラをつなぐ仕組みとしては「IBM SmarterCloud Orchestrator」を発表したばかりだ。

 サバー氏は、「イノベーションを生むためのオープンなアーキテクチャやインターネット上のコンピューティングパワーがある一方、プロプライエタリなシステム、あるいはセキュリティ、ガバナンス、コンプライアンスが企業のシステムにはある。IBMはそれら全てを疎結合することによって、標準による柔軟性、シンプル性、相互運用性、ワークロードの最適化という価値を企業に提供していく」と表明した。

和田秀雄氏

 ITインフラの最適化と並んでIBMが重要テーマに掲げるのがセキュリティだ。ソフトウェア事業 セキュリティーシステムズ事業部 事業部長の和田秀雄氏は、「サイバー攻撃が、スキルの誇示あるいは企業への復讐といったものから金銭の搾取、さらには、国家によるスパイやテロへと高度化している。攻撃者の数は増え、スキルも高まっている」と語る。

 IBMのセキュリティ研究機関「X-FORCE」の調査によれば、企業が1週間に被るサイバー攻撃は平均26万4000件にも上る。その大半はごく小さいものばかりだが、システム停止に追い込むDDoSのようなセキュリティインシデントはそれでも平均62件も起きている。企業ではこれまでにもありとあらゆるセキュリティ対策が講じられてきた。しかし、今のサイバー攻撃はいずれの対策もすり抜けて企業の中に侵入できるレベルにある。

 このため日本IBMは、システムのログやX-FORCEの知見、脆弱性などセキュリティに関する無数のソースをもとに、サイバー攻撃や内部不正を検出するための「QRadar」を提供している。和田氏によれば、IBMには「ヒト」「データ」「アプリケーション」「インフラストラクチャ」の4つからなるセキュリティのフレームワークがあり、それらのソリューションをX-FORCEが支える。「セキュリティのこともIBMに相談していただきたい」(和田氏)と呼び掛けた。

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