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» 2013年06月25日 08時00分 公開

「モノ申す」自治体の情シス:クラウドから始まった足立区のシステム最適化物語(前編) (1/3)

東京都足立区は2012年度末に独自構築によるプライベートクラウド基盤の運用を開始した。民間企業よりもIT活用が遅れがちとされる地方自治体にとって、それは無謀ともいえるチャレンジだろう。ベンダーロックインからの脱却を含めた情シス最適化に挑む足立区に話を聞いた。

[國谷武史,ITmedia]

 東京23区の足立区は、2012年度末にプライベートクラウドによる情報システム共通基盤の本格稼働をスタートさせた。民間企業でのプライベートクラウドの構築が本格化している昨今、民間よりもITの活用が数年遅れになりがちだといわれる地方自治体の中で、足立区の取り組みは先進的なものだろう。

 その実現までには、幾多の困難な課題をクリアしなければならなかったという。同区のCIO補佐を務める浦山清治氏と政策経営部情報システム課の方々に、システム最適化への取り組みを聞いた。前編では共通インフラの構築におけるエピソードを紹介する。

足立区CIO補佐監の浦山清治氏と情報システム課長の秦彰雄氏、システム最適化担当係長の保志野広氏、野田真氏(左から)

サーバルームに隙間なし……

 足立区での情報システム最適化の取り組みがスタートしたのは、電子自治体推進計画が叫ばれた2008〜2009年頃に遡る。浦山氏によると、当時の情報システム課長を中心として、5年後(2012年度末)までにメインフレームやオープン系などで稼働する300以上のシステムの集約化が検討された。当時はまだ「クラウドコンピューティング」という言葉もあまり普及していない時代だ。

 情報システム課長の秦彰雄氏は、当時の状況をこう振り返る。

「業務ごとにサーバラックが乱立していました。システムは5年ごとに更改していましたが、(300システムもあると)それが毎年のことになっていました。サーバルームに空きスペースがほとんど無くなり、更改に伴う旧システムと新システムの並行稼働もほぼ不可能でした」

 情報システムの導入や刷新では「主管課」と呼ばれる区の業務部門(ユーザー)を主体に、情報システム課とベンダーを加えた3者で進めるのが原則となっている。

「主管課からは『なぜ5年ごとにシステム更改するのか。大きな負担なので何とかしてほしい』と言われ、業務ごとにサーバなどを調達しないで済むよう、集約化するしかないだろう考えました。クラウドという言葉も聞いたことが無く、『大きなサーバをみんなで使うのかな』という感覚でした」(秦氏)

 当時の課内ではクラウドコンピューティングの基本的な概念を理解できる職員は、ほとんどいなかったという。自治体の人事ローテーションは3〜4年ごというケースが多い。情報システム課は、ほかの業務部門よりも専門性が高いことから異動までの期間がやや長いものの、ITのバックグラウンドの全く無い職員が多い。

 秦氏は、以前にも情報システム課に在籍してメインフレームを構築した経験があり、クラウドの基本概念を多少は理解できたという。浦山氏は、「ASPサービスが進化したくらいで、要はネットワークの裏側にあるサーバ群の配置の仕方が違うだけ」と平易に解説していた。

 だが、具体的にどうクラウドを構築すれば良いか検討を始めてみても、情報システム課の考えるクラウド基盤の構築事例が無かった。当時は、総務省と中心に自治体クラウドの実証実験が全国で行われていたものの、それらは小規模自治体が共同でシステム基盤を利用するというモデルばかりだった。「足立区のように都市部の自治体にはあまり参考になりませんでした。民間企業が対象のセミナーにも参加しましたが、自治体に合うものはなかなか見つかりませんでした」(秦氏)

 浦山氏は、秦氏に「基本はメインフレームと同じ。土台は同じで、その上にいろいろなアプリケーションが乗るので、それを構築するだけだ」とアドバイスしたという。これを聞いて秦氏は、クラウド構築の方針を固めた。

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