【第1回】新米だった私がヒットサービスを作れたワケAmeba初代プロデューサーが語る “燃焼系”プロマネ論(1/3 ページ)

サイバーエージェントでいくつもの大型プロジェクトを立ち上げてきた山崎ひとみさん。新連載第1回はプロデューサーとしての彼女の地位を確立した「アメーバピグ」のプロジェクトを振り返り、成功するプロマネの勘所を探る。

» 2013年08月07日 08時00分 公開
[山崎ひとみ(サイバーエージェント),ITmedia]

ヒットは訓練で作ることができるか

 「ヒットサービスを生むための秘けつは何ですか」

 「プロデュース業とはどのようなお仕事をされているのですか」

 ありがたいことに、こうした質問を多くの方々から受ける機会が増えています。その背景には、会員規模1500万人にまで成長したコミュニティーサービス「アメーバピグ」の新規立ち上げを、入社2年目からプロデューサーという立場でやり遂げたという経験が大きいからだと思います。

2009年2月にサービス開始した「アメーバピグ」 2009年2月にサービス開始した「アメーバピグ」

 今振り返ってみると、アメーバピグの立ち上げに携わっている当時は、まさかこのサービスがこれだけ多くの人を動かすものになるとは思ってもいませんでしたし、私は本当にクリエイター、エンジニア泣かせのプロデューサーだったと思います(迷惑をかけるという意味で)。ですので、プロデューサーと名乗ることへの気恥ずかしさ、くすぐったさみたいなものは、正直いまだにあります。

 そんな私ではありますが、幸いにもプロデューサーとしてヒットサービスを生み出すことができました。プロデューサーに限らず、どんな職種でも、ヒットを生むということに計り知れない価値があります。ただし、ヒットというのは「打率」なので、100%必ずヒットを生むことはできなくても、ヒット率が高いプロデューサーには訓練すればなれるのです。

 アメーバピグの後、私はスマートフォン向けコミュニティーサービス「きいてよ!ミルチョ」の立ち上げにプロデューサーとしてかかわりました。これも現在では会員80万人を超えるサービスとなりました。こうしたプロジェクトを通して学んだのは、「 夢をもって“決断”すること」「リスペクトをもって“チーム戦闘力”を磨くこと」の2つです。これらが打率を上げることにも大きくかかわっているのです。

 本連載では、これまでのプロジェクトマネジメントの経験を基に、 実際のプロジェクト現場で起きたエピソードなどを交えながら、私がプロデューサー、そしてリーダーとして大切にしていることを紹介していきます。

エース級に囲まれて……

 アメーバピグの立ち上げプロジェクトを任されたのは、2008年5月のこと。ちょうど社会人2年目になったばかりでした。新卒でサイバーエージェントに入社し、プロデューサー候補一期生としてアメーバ事業本部に配属、既存のAmebaサービスの改善を中心とした業務にも慣れてきていたころでした。

 「そろそろもっと大きな仕事をさせてもらいたい」と上司に掛け合った矢先、社長であり、アメーバの総合プロデューサーである藤田晋から声が掛かりました。プロデューサーに選んだ理由について、後に冗談半分で「暇そうだったから」と話してくれましたが、当時はそれほどアメーバ事業本部にも社内にもプロデューサー業の人間が少なかったことも関係しているかもしれません。

 「Amebaブランドではやるアバターサービスを作る」というミッションで始まったこのプロジェクトには、現・執行役員で主席エンジニアの名村卓を筆頭に、エンジニア、クリエイターのエース級の人材がプロジェクトメンバーとして集められました。その中に、右も左も分からない私がぽつんといたわけです。

 しかし、プロデューサーという肩書きは、社外から見るとリーダーとして振舞わなくてはならない存在。当然、その立場に見合った仕事を期待される場面も多く、実像とのギャップに焦りばかりが募る毎日でした。

 例えば、新サービスの方向性(コンセプト)を決める際にも、年齢も経験も上で、エース級のメンバーが集まるチームの中で、一体何をしたらいいのか分かりませんでした。ミーティングを仕切れなかったり、それっぽいデータは集めてみたものの結論が出せなかったりと……。方向性を見い出してもらおうと社長や上司、現場の開発陣など、さまざまな人の意見を聞いていたら、ますますどこに向かったらいいのか、何をしたらいいのか分からなくなり、進んでいるようで何も進まないということを繰り返していました。

 そして遂に、社長にも「次の週に持ってくる企画が駄目ならプロジェクトはクローズだから」と言われる状況にまで陥ってしまいました。大ピンチ。

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