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» 2013年09月13日 08時00分 公開

ノマドワーカーに告げられた契約解除、歩き回って判明した原因萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(2/3 ページ)

[萩原栄幸,ITmedia]

 それから1週間程して、筆者はA氏に同行し、B社を訪問した。先方はC社長、顧問弁護士、そして社長室長と人事部長、情報システム部課長の5人が応対した。そこでのやり取りは以下のようなものだった。

  • B社の情報統制は極めて強固なシステムに守られている。内部不正や錯誤による情報漏えいについて確認したが、可能性はゼロに等しいとの調査結果を第三者の専門機関から受けている
  • ライバル企業が入手した情報は、それが全部であるかはまだ不明であるものの、入手した事実は間違いない。その中にA氏にだけ伝えた内容が含まれていた。その他の情報はプロジェクトに関係する他社も入手できるものだが、A氏にはそれら全てを提供している。さらに致命的なことには、A氏が当社に対して準備していた企画提案の内容までもライバル企業に渡っていた
  • ライバル企業は個人のフリーライターからの持込みでこの情報を入手した(通常、この事実は被疑者に伝えないが、本件ではC社長が伝えても構わないとのことでA氏に明かした)
  • 故意か過失かは別問題であり、故意であるなら、A氏はライバル企業と金銭取引したことになる。過失ならA氏の脇が甘く、事務所への空き巣やノートPCの盗難によって情報が漏れたとしか考えられない。内部不正なら、作成途中のA氏の企画提案書などをライバル企業が入手できないはずである
  • 社長の計らいもあるので、今回はプロジェクトからの追放だけで済ませたい。ただ、今後の調査によって「故意」だと判明すれば、それなりの損害賠償請求をするので覚悟してほしい

 B社側からこれらの事実が告げられた後、C社長は「極めて残念だ。本当なら一緒に仕事をしたかった。しかしこうなっては、これ以上かばうことはできない。結果として先方企業からクロスライセンスの申し入れの際にバランスをとるということになり、当社はこの条件を呑んだ。本来なら君に損害賠償を請求するところだが、それでは私の気持ちが晴れない。そこを分かってほしい」と話された。

 ここまで証拠を突きつけられた。それでも「穏便に済ませたい」というC社長の意思がひしひしとして伝わってきた。本来なら感情的になり、「この損害をどうしてくれる」と罵倒されるのが普通だからだ。筆者はA氏に「調査だけは継続したい」とお伝えするしかできなかった。

 ところで調査といっても、どう進めるべきか悩んだ。当然ながらA氏にヒアリングし、作成途中の企画提案書から情報がいつ頃に漏えいしたのかは特定できたものの、その他の手がかりはほとんど無い。

 そこで当日の行動を再現してもらうことにしたが、A氏は「こんなことしても意味が無い!」と文句を言うばかりで、筆者も「だったら社会人の常識として、あなたならどうするんだ! 私にもここまで付き合う義理は無いのですよ」と思わず口にしてしまった。それほどまでに八方ふさがりの状況だった。

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