中央大、学生4500人が私物PCで利用する“バーチャルPC室”構築の舞台裏導入事例(1/2 ページ)

学生が私物のPCやタブレット端末から学内のICT環境を利用する――そんな仮想デスクトップクラウド環境を中央大が構築。システム構築の舞台裏を同大副学長に聞いた。

» 2013年09月25日 09時00分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo 実習室の様子

 学生が私物のPCやタブレット端末から学内のICT環境にアクセスし、場所にとらわれず専門的なソフトウェアなどを使って学習する――そんな先進的なICT教育に取り組む大学が現れつつある。中でも、国内で先陣を切ってICT環境の“モバイル化”に取り組んでいる大学の1つが中央大学だ。

 同大ではこの春、理工系学生約4500人が通う後楽園キャンパス(東京都文京区)のコンピュータ室に当たる「実習室」のICT環境を刷新。WindowsとLinuxの両方を同時に立ち上げて使える仮想デスクトップクラウド環境を構築し、4月1日に本格稼働をスタートした。

 2014年には実習室内の端末250台だけでなく、室外のPCや学生の個人所有PCからもこのICT環境にリモートアクセスできるようにする予定という。新システムの構築を計画した副学長の加藤俊一教授に、導入の背景と狙いを聞いた。

学生がコンピュータ室に行列……「ログインだけで10分かかる」

photo 中央大学副学長 兼 理工学部教授の加藤俊一 工学博士

 同大の理工系学科では、プログラミングなどの実習はLinux上で行い、レポートはWindowsのオフィスソフトでまとめる――という方式を多くの授業で採用している。「プログラミングや各種シミュレーション作業にはLinuxが向く。学生に幅広いICTスキルを身につけてもらうためにも、LinuxとWindowsの両方を提供することは欠かせない」と加藤教授は話す。

 そこで03年にはデスクトップPC環境、09年にはブレードPC方式のシンクライアントシステムにVMwareのOS仮想化ソフトをそれぞれ導入し、Linuxを立ち上げたうえでVMwareによってWindowsを起動させる仕組みを10年にわたって提供してきた。これは導入当時としては先進的な取り組みだったが、PCを使う授業が増えるにつれ、以下のような課題に直面するようになったという。

 1つ目の課題は、ログインにかかる時間の長さだ。講義開始時には約200人もの学生が同時にLinuxにログインし、その後Windowsを一斉起動するため、サーバ側の処理が追い付かず、全員のログインが完了するまでに10分ほどかかることもあったという。

 「学生に不便な思いをさせてしまうのはもちろんのこと、教員にとっても貴重な講義時間90分のうち1割以上を無駄に使ってしまうことになる。また、授業のテンポが悪くなってしまう問題もあった」と加藤教授は振り返る。

 もう1つの課題は、専門性の高い学習内容ならではの“端末依存”だ。同大の理工系学科では、多くの授業でLinux向けの専門的なアプリケーションを使用する。そのため、学生は室外のPCや私物PCで課題や作業の続きを行えず、学内に250台しかない端末を求めて「実習室の廊下に行列ができることもしばしばあった」という。

 「『学内の端末を使えなかったせいで課題が終わらなかった』と学生が言えてしまうようなシステムを放っておくわけにはいかなかった」と加藤教授は振り返る。こうして、同大の仮想デスクトップクラウド構築プロジェクトはスタートした。

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