民間の積極性が後押し オープンデータに本腰入れる横浜市(1/2 ページ)

オープンデータを推進する自治体の1つ、横浜市に取り組みの現状や今後の展望などを聞いた。

» 2013年10月22日 09時30分 公開
[伏見学,ITmedia]

 「オープンデータ」の利活用を推進する動きが日本でも本格化してきた。オープンデータとは、その名が示す通り、広く公開されたデータのこと。具体的には、政府や自治体などの公的機関が提供する統計情報などの行政データや、民間事業者や個人が提供する二次利用可能な公共性の高いデータなどが含まれる。

 2012年7月、政府が公共データの活用促進に集中的に取り組むための「電子行政オープンデータ戦略」を策定したのを皮切りに、総務省をはじめとする産官学が共同でオープンデータを流通させるための基盤整備を目的にした「オープンデータ流通推進コンソーシアム」を立ち上げたほか、経済産業省が保有データを積極的に公開して経済活性化を図る「DATA METI構想」を打ち出すなど、大きな盛り上がりを見せている。

 この余波は地方自治体にも及んでいる。その先進的な例が神奈川県横浜市だ。元々、横浜は、市民メディアや地域SNSなど市民が地域情報を収集、発信する活動が盛んな都市である。

「Yokohama Art Search」のサイト 「Yokohama Art Search」のサイト

 オープンデータに対する取り組みについても、以前から公益財団法人の横浜市芸術文化振興財団がWebサイトで配信されているアート関連イベント、施設、アーティストなどの情報をLinked Open Data(LOD)化していた。LODとは、機械処理が容易な形式で情報を共有するための方法。このデータを活用したWebアプリケーション「Yokohama Art Search」や「Yokohama Art Spot」などを開発して、横浜の芸術文化に関する情報を迅速に検索できるようにするなど、市民の利便性向上を図ってきた。

 また、2012年12月には、横浜オープンデータソリューション発展委員会が設立。横浜のオープンデータを民間側から推進するための組織として、民間企業や大学研究者、NPO団体、メディア関係者、クリエイターなどが集う。具体的な活動として、(1)公的データを活用したアイデアソン、ハッカーソンの開催、(2)公的データによって横浜の政策課題を多様な主体で共有し、解決に向けて対話を進めるフューチャーセッションの開催、(3)横浜市や国に対するオープンデータの技術や制度の検討提案、(4)オープンデータを進める都市間交流の推進、などを行っている。

 例えば、2013年2月23日には、世界中で一斉に開催されるオープンデータ普及イベント「2.23インターナショナル・オープンデータ・デー in YOKOHAMA」を主催した。同イベントでは、オープンデータに取り組む世界中の都市とリンクし、データの生産、シェア、活用についての先進事例を学び、課題を共有する「オープンデータハッカソン&アイディアソン」や、オープンデータを活用したアプリを使いながらの街歩きワークショップなどが実施された。

 また、同年6月には、横浜の「開港祭」に合わせて、AR(拡張現実)アプリを用いた横浜の歴史体験ツアーを開催した。横浜市立中央図書館で所蔵する横浜の歴史に関する画像資料のうち、電子化されたオープンデータとしての画像を複数点用意。指定の場所で街歩きする参加者のスマートフォン上にそれらを映し出すことで、現在の風景と見比べることができたという。

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