2013年のセキュリティ事件簿・SNSやスマホの「秘密」をめぐるお作法萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(2/3 ページ)

» 2013年12月13日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

人生を棒に振りますか?

 筆者が大学時代だった時にも、アルバイト先に「バカッター」のような人はいた。でも、「すぐに忘れる」ということ、「証拠がない」ということ、「その場の数人にだけが見た」ということから、社会的に問題視されるような事態にはならなかったし、多くの場合は行動後のことをよく想像してみて面白い行為とは思えないので、実行に移さなかったものである。

 それが、今ではその想像力が欠如している。行為の結果として、クビになるなら良い方だ。多額の損害賠償訴訟を起こされ、倒産原因がバカッターということなら高額な支払いを一生背負うこととなる、クビで済んだ学生諸君には申し訳ないが、その後の就職活動は絶望的だと考えて差し支えないだろう。

 学生の中には、博士課程であってもセキュリティの基本を忘れてスマホやSNSを使っている人がいる。「実名でないから大丈夫」といって別の人格を演じ、「Webサイトを炎上させる」と吹聴していた一流大学院生もいた。「匿名だから大丈夫」という浅はかな人がとても多い。

 その方々には悪いが、その気になれば身元を割り出すのは比較的簡単だ。サイバーテロリストがあたかも実在するようなネット上の人格を何年もかけて作るのとは訳が違う。軽い気持ちで「別のだれにかなりすまし」をしても、ネット上の自称「正義人」によって、簡単に個人の身元が特定されてしまうのだ。警察関係者ならもっと簡単に割り出せることは、言うまでもない。

 また、匿名だから大丈夫」と考える人は、「捕まらなければ大丈夫」とも考えがちだ。その思考は、絶対にその後の人生においてプラスに作用することはない。それは加害者としてのバカッターにも、その身元を割り出す「正義の味方」にも言える。

 今年11月に、日本セキュリティ・マネジメント学会の学術講演会を開催した。この中でも講師の方々が「今のSNSに匿名性はほとんどない」と話をされた。どんなSNSでも大量の情報漏えい事件が発生している。そこでのみ管理している情報だろうとも既にネット上に流れているし、米国の「PRISM」の騒動でも明らかな通り、国家は個人に対して強権で情報を吸い上げてしまう。

 だから、筆者はTwitterもFacebookもほとんど投稿していない。現実社会で充分過ぎるほどの情報を得られるということもあるが、セキュリティ分野では高名な研究者の方々も積極的にSNSなどでは行動をしていない。

 以前に取り上げた「友達リクエスト」も同様である。架空の素敵な女性はおろか、実際の知人になりすまして近づいてくる。携帯電話やメールで本人確認ができるなら良いが、できないとなると無視せざるを得ず、「無視するのか」と誤解される。だからといってID自体を削除するのは、情報入手ツールという意味ではメリットもあるし、SNSの状況を知るうえでは加入してこそ分かる部分もあり、「痛し痒し」である。

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