Windows 8.1

新OSへの移行を阻むクライアント環境の問題さよならWindows XP、そしてWindows 8.1へ(2/2 ページ)

» 2013年12月19日 08時00分 公開
[山本雅史,ITmedia]
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個人ファイルは社内のサーバへ

 メールのデータと同じく問題になるのが、社員が個人でローカルに作成しているファイルだ。このデータは、さすがに新しいWindows 8.1のPCへ移行する時に転送しないわけにはいかないだろう。だが、将来もOSの移行やPCのリプレースが起こることを考えれば、クライアントPCにデータを保存せず、全てファイルサーバを使う手段がある。

 ただしファイルサーバを使うといっても、データを保存する時にローカルのドライブを選択できたり、ファイルを保存するWindowsの個人フォルダがローカルドライブにあったりすると、ファイルが散逸してしまう。そこでお勧めしたいのは、Active DirectoryなどでクライアントPCが使用する個人フォルダを、強制的にファイルサーバ上のフォルダにしてしまうことだ。これなら、オンプレミスのファイルサーバをドライブとして使うため、クライアントPC上にはデータが保存されない。

 このようなITシステムを前提とすれば、Windows XPからWindows 8.1のPCに入れ替える時に、システムドライブをSSDなど高速だが容量の小さなドライブだけにして、大容量のHDDを搭載しないという決断もできる。今後はクライアントPC自体にはデータは保存せずに、クラウドのメールやオンプレミスのファイルサーバを利用するようにすれば、OSの移行やPCのリプレースは非常に簡単になるだろう。

 こういった流れの究極が「VDI(Virtual Desktop Infrastructure)」である。ネットワーク上のサーバ(クラウド)にクライアントOSをインストールして、個人の環境を構築する。ユーザーは、PCではなくシンクライアントといわれるVDIにアクセスするだけの機能を持つ端末を使う。OSはクラウド上で動いているが、使い勝手としては手元にPCを置くのと全く変わらない。

 VDIのメリットは、社内だけでなく、社外からクラウドにアクセスしても同じ仕事環境が使える。このため、データがクラウドの外部に出る可能性が少ない。Windows XPのサポート終了のタイミングで、Windows XPをVDI化し、クラウドで運用しようというサービスもある。

 筆者個人としては、サポートが終了するOSをクラウドで引き続き運用することは、リスクだと考えている。セキュリティ更新プログラムの提供されなくなるため、後はWindows XPのVDIサービスを提供するクラウドがどれだけ高いセキュリティを確保できるか次第になる。また、クラウドベンダーが高いセキュリティ性を提供してくれても、数年のうちに今度はWindows XPのVDIから別の環境への移行が必要になるだろう。こういったことを考えれば、“場つなぎ”としてWindows XPのVDIを導入することはあまりお勧めできない。

 VDIは、コストに関しても安いものでは無い。下手をすれば、新しいWindows 8.1のPCを導入する以上のコストになる。だからこそ、戦略的にVDIを導入するという方針が必要だ。Windows XPのサポート終了があるからという消極的な理由だと、コスト面で立ち行かなくなるだろう。

 Microsoftは、開発者向けの「Build」というカンファレンスを2014年4月2日〜4日に米国・サンフランシスコで開催する。2013年のBuildではWindows 8.1のプレビュー版を公開していた。このため、2014年のBuildでは2015年のリリースがウワサされている次世代のWindows OSに関して、開発者向けに詳細な説明があるだろう。また、2014年の春頃にはWindows Phoneのアップデート(Windows Phone 8.1?)に合わせて、Windows 8.1のマイナーアップデートも計画されているようだ。この時点ではWindows PhoneとWindows 8.1のアプリを提供するStoreの統合などが計画されているとみられる。

 2014年春の時点でWindows PhoneとWindows 8.1のアプリは、それぞれのプラットフォーム用に開発する必要があるだろう。しかし、Microsoftは次世代のWindows OSについて、今のWindows Phone、Windows 8.1、Xbox Oneなどを一つのプラットフォームに統合する計画だ。同社は、1つのアプリが3つのプラットフォームで変更なしに動作できるような環境を目指している。

Build 2014の開催案内。Buildは毎回、人気の高いカンファレンスのため、登録開始直後に満席になってしまう。Build 2014は2014年1月14日の午前9時(米国太平洋時間)から登録開始だ

 こういったスケジュールをみていくとWindows XPからの移行とは、単にWindows 7やWindows 8.1のPCへ移行するというだけでなく、社内のITシステムをもっと大きなスタンスで考えるべきものだといえる。もし、ITシステムへの大きな戦略を描くのに時間がかかるなら、場当たり的にWindows XPからの移行を行うのでは無く、少し時間をおいて10年単位でITシステムのグランドデザインを考えてから、Windows XPの移行やメールなどのサービスのクラウド移行を考えるべきではないだろうか。

 Windows XPのサポートは終了するが、サポートが終了しても社内PCは使える。ずっと使い続けるわけにはいかないが、場当たり的にコストをかけすぎるのも問題だ。だからこそ、時間が無いなら最低限の手当を行ってから、じっくりとITのあるべき姿を思い描いてITシステムの再構築を行いたいものだ。

 次回からは、最新OSであるWindows 8.1の企業向けの機能やOffice 365などの機能を紹介していく。

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