昨年末に開かれた参加型ワークショップを題材に、「シナリオ・プランニング」の具体的な進め方を紹介します。
前回は、未来から成立条件をたどって考えていくという「バックキャスティング」の大切さと、起きるかもしれない未来のさまざまな姿を具体的に描き、その可能性に備えるための方法論である「シナリオ・プランニング」を紹介しました。
今回は、シナリオ・プランニングの進め方について、実際に行われたワークショップイベントを基にお伝えしていきます。
2013年の暮れ、英治出版のオープンスペース<EIJI PRESS Lab>で開かれたシナリオ・プランニング実践会には、「社会を自ら変えていこう」という意識を持つ参加者が集まりました。
英治出版という出版社自身も大変ユニークで、社員の誰もが「自分たちは本を売るために仕事をしていない。読者が社会的アクションを起こしてくれることが目的である」と口を揃える会社です。この日は、英治出版の文化と、この日に集まった参加者のカラーを見据えて、次のような「問い」の設定をしました。
「ソーシャルアクションテイカーの未来」
より良い社会の実現に向けて自らアクションする集団に、
どんな未来が待っているのか?
「ソーシャルアクションテイカー」という、ここで初めて示した概念を自分ゴトにしてもらうために、参加者全員に今まで話したことのない人と2人組を作ってもらい、お互いに「ソーシャルアクションテイカーとしての自分」のストーリーを話してもらいました。
ファシリテーターは、参加者の皆さんが生き生きと話をしてくれているかに耳を澄ませます。ここでもし、「ソーシャルアクションテイカーって何?」などと話しているようであれば、その場で問いを再設定する必要があります。この日は全員がこのテーマについて熱心に話し合ってくれていました。
ここからがシナリオ・プランニングの本題に入っていきます。まず、先ほどのペアがもう1つのペアと一緒になって、4人チームを作ってもらいます。それぞれが「この人はこんなソーシャルアクションテイカーで」と他己紹介を行い、4人が知り合いになります。
次に、STEEP(Society, Technology, Economy, Environment, Politics)のカテゴリーごとに、ソーシャルアクションテイカーに影響のある「変化の兆し」を対話し、それを付箋に書き留めてもらいます。
制限時間になったら、各チームでそれぞれ挙げた「変化の兆し」の中から、「ソーシャルアクションテイカーの未来」にとって、インパクトの大きいものを5枚だけ選んでもらいます。さらに、そこから「不確実性のもっとも高い」ものを1つ選んでもらいます。
ステップ2で1つだけ選んだ変化の兆しを使って、未来を左右する分岐点を対立軸として表します。対立軸の名前としての主語(観点や視点)と、未来がどちらに分岐するかを表す述語(観点や視点の状態)を右図のように付箋に書き表します。
各チームの付箋を提出してもらったら、それをすべてホワイトボードなどに貼り出します。そして全員にドットシールを2票ずつ配り、各自が納得する2軸に投票します。ここでの注意点は、2つの軸をそれぞれ依存関係のない独立した観点、視点になるよう選ぶことです。
この日の投票では、最終的に次の2つの分岐点が選ばれました。
1. 個人の欲が、「もっともっともっと」になるか、「足るを知る」になるか。
2. 経済・社会システムが、「お金のもとに成立」するようになるか、「信用のもとに成立」するようになるか。
ファシリテーターは、この2軸を使って右図のようなマトリクスを作成します。そして休憩後、自分で作ってみたい世界観のテーブルに着き、新たな4チームに分かれて作業をするように指示します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.