シナリオ・プランニングを実践するための4つのステップ今こそビジネスマンが習得したい発想法(2/2 ページ)

» 2014年01月29日 08時00分 公開
[野村恭彦,ITmedia]
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ステップ4 シナリオを描く

 最後のステップでは、実際に4つの世界観それぞれに分かれて、全員が、自分自身の作りたい未来を具体化します。各チームは、「選んだ世界はどんなところか?」「この世界で最も素敵な出来事は?」について対話します。

4つの世界観 4つの世界観

 そして、シナリオ名を付け、その世界の成立条件、つまりその世界が実現するためには何が起きているはずかをバックキャスティングします。そして、各人はそのために何をするかを考えます。

 世界観1は、個人の欲はもっともっともっと、経済・社会システムは、お金のもとに成立しています。この世界での素敵な出来事は、お金を稼いだ人がエンジンとなって、どんどん良いことにお金を使っていきます。チームメンバーは、このシナリオを「ノーブレスオブリージ」と名付けました。

 世界観2は、個人の欲はもっともっともっと、経済・社会システムは、信用のもとに成立しています。この世界での素敵な出来事は、誰もが他人のために何をするかを一生懸命考えていることです。チームメンバーは、このペイフォワードの連鎖のシナリオを「利他でワッショイ」と名付けました。

 世界観3は、個人の欲は足るを知る、経済・社会システムは、信用のもとに成立しています。この世界での素敵な出来事は、皆が「今の自分を支えてくれている人たちに心から感謝の気持ち」を持つことです。チームメンバーは、このシナリオを「大きな大きな人間椅子」と名付けました。

4つのシナリオが出来上がった 4つのシナリオが出来上がった

 世界観4は、個人の欲は足るを知る、経済・社会システムは、お金のもとに成立しています。この世界での素敵な出来事は、誰もが「本当に大切なものだけにお金を使うようになる」ことです。チームメンバーは、この経済システムが価値の本質を選別してくれるシナリオを「秘伝のタレ」と名付けました。

 これら4つの世界観は、ソーシャルアクションテイカーが大切にする、異なる4つの価値観を見事に表していました。社会起業家に関する議論の中で、今までは世界観1はビジネス偏重の世界、世界観3がノンプロフィットの世界という先入観がありました。今回の4つのシナリオは、4つの世界観それぞれにポジティブな面とネガティブな面があることを見せてくれました。ソーシャルアクションテイカーたちは、この4つのシナリオを通して、お金とうまく付き合って変化を起こしていく方法、我慢するのではなくもっと発展しながら社会をより良くしていく方法があることを意識し、今後のアクションに生かしていくことができるようになりました。

 さあ、あなたもシナリオ・プランニングで、未来から考える思考法を手に入れてみては!?

著者プロフィール

野村恭彦(のむら・たかひこ)

株式会社フューチャーセッションズ代表取締役社長、金沢工業大学(K.I.T.)虎ノ門大学院教授、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員。博士(工学)。富士ゼロックス株式会社にて事業変革ビジョンづくり、新規ナレッジサービス事業KDI立ち上げなどに従事。2012年6月、企業、行政、NPOを横断する社会イノベーションをけん引するため、株式会社フューチャーセッションズを立ち上げる。著書に『フューチャーセンターをつくろう』(プレジデント社)、監訳書に『シナリオ・プランニング』(英治出版)など。


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