女性が注意すべきセキュリティ――身に降りかかる犯罪被害と対策萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/2 ページ)

今回も引き続き、女性にご注意いただきたい「セキュリティ事項」を取り上げる。後編では深刻な被害につながりかねない犯罪とその対策などをご紹介したい。

» 2014年05月02日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

(※前編もチェック!

盗撮・盗聴の手口と対応策

 5月になればだんだんと薄着になり、盗撮も増加傾向になります。以前、警察関係者との雑談で盗撮が話題となりました。やはり犯行が多いのは駅ではエスカレーターや駅構内の書店やみどりの窓口、トイレが多いようです。ショップではお客と女性店員の両方が狙われます。カウンター越しに相手と話している時は、後ろに注意します。置き引きや盗撮の被害に遭う可能性があります。

 また最近、米国では「盗撮にピッタリ」と、一定の施設でGoogle Glassの使用を禁止しているところが出てきました。同様に、盗撮カメラを内蔵した双眼鏡や文房具、首からぶら下げる入館証のカードフォルダー、靴にまで仕込まれているケースなど、その手口の種類は豊富にあります。

 昨年話題になったものに、航空機内での盗撮者がどこで撮影したのか特定できないとの理由で無罪になった事案がありました。ほとんどの都道府県が迷惑防止条例によって盗撮を禁止していますが、国の法律ではないので必ず「〇〇県の迷惑防止条例違反」ということが条件になります。しかし、それを特定できない場合は罪に問えないという点があります。

 プライバシーの「のぞき見」ということでは盗聴も少なくありません。会社の更衣室や机、会議室、自宅などあらゆるところが狙われています。盗聴機器もコンセント型、延長コード型、電卓型、固定電話の受話器内蔵型、机の裏に貼り付け可能なマグネット型まで、本当に「よくぞここまで」というくらいに種類が多く、秋葉原では無数に販売されています。

 盗撮カメラもレンズ穴の径がたった0.2ミリしかないながら、画像は鮮明でしかもカラーです。筆者は、以前に勤めていた銀行でATMからカード情報がスキミングされる事件を調査したことがあります。その時に調査した盗撮カメラはあまりに精巧で、とてもびっくりしました。

 もし不安であれば、こうした盗聴・盗撮機材の大部分は画像や音声を電波で飛ばしているので、その周波数(ほぼ決まっている)を調査することで確認できます。今では会社全体で定期的に盗聴・盗撮の機材を発見する調査を行うケースもみられますが、自宅まで調査をすることはありません。

 簡易型の「発見機」なら数千円程度で通販されていますが粗悪品も多く、必ず有識者に相談して購入した方が賢明です。「専門業者なら安心では?」という方もいますが、慎重に選択すべきでしょう。一部の業者はデタラメに近い作業で済ませています。

痴漢と対応での悲しき事実

 痴漢によって精神的な被害にも遭い、それが原因で男性恐怖症になる場合や、痴漢がストーカーとなってさらなる被害につながる場合もあります。

 最も良い対応は鉄道警察隊に相談することです。主要駅には「痴漢相談所」が設置されています。相談所が無い場合でも、駅員に相談すればその部署の紹介をしてくれますので、女性駅員に声をかけてみましょう。

 一方で時折、複数の友人を協力して痴漢常習者を捕まえようとする場合もありますが、これはあまりお勧めできません。実際にはえん罪を生んだり、失敗したりするケースが多いからです。

 突然の被害に遭ったら少しだけ勇気が必要ですが、恐れることはありません。乗客たちはあなたの味方になってくれるはずです。例えば、お尻を触っている瞬間に犯人の手をつかんで頭の上まで持ち上げ、「この人、痴漢です。この手でお尻を触っていました」と大きな声で話すことが理想です。一人で悩んでも何も解決しません。

 ただ、痴漢被害を訴える場合に「えん罪」というリスクが伴う現実もあります。勘違いという場合から、酷い場合は複数人で相手を陥れ、金銭を搾取する事件もありました。

 痴漢の容疑者は通常、会社を懲戒解雇され、家庭では離婚、子供たちや近所から蔑視され、いたたまれなくなって転居することにつながり、生活が破壊されます。よって実際に裁判でえん罪が認められると、女性側に多額の損害賠償が請求されることがあります。

 実際に筆者もその直前まで経験したことがありました。新聞を読んでいた車内がだんだん混み合ってきたので、新聞を丸めて手に持っていました。すると突然、近くにいたカップルの女性が彼氏の耳元で「痴漢している」とささやき、にらみつけてきました。彼氏は「殺すぞ、外に出ろ」と脅してきました。

 幸いにも近くに立っていたご老人が、「何を言うの! 私はずっと見ていたけど、その人は1回もそういう素振りをしていないから、嘘をつくのは止めなさい!」と証言してくれました。もしその一言がなければ、とても恐ろしい事になっていたかもしれません。

 痴漢行為は本当に卑劣で、犯行を行った人間は「自業自得」として奈落の底に落とされますが、えん罪では逆に女性が窮地に追い込まれます。残念ながら、こうした現実がありますので十分に注意して(少なくとも実際に現場を見たり、触れられたりしている時に手をつかむことが望ましい)行動を起こしてほしいのです。

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