出入り禁止にしたい「営業」の3つの条件ITソリューション塾(1/2 ページ)

こんな営業は即刻ご退場いただき、今後は出入り禁止にしたいものだ。

» 2014年09月12日 07時30分 公開
[斎藤昌義(ネットコマース株式会社),ITmedia]

「うちの会社には、毎日のようにソリューションベンダーの営業の方がお越しになり、自分たちのサービスや製品を紹介してくれるんです。それはありがたいことなのですが、でも、こちらが何を必要としているか、どのようなことで困っているかなどの質問なしに、“我が社の商品は……”と話し始める人がほとんどです。どうすればいいでしょうか?」

 こんなご質問を頂戴したことがある。彼女は、ある大手企業の情報システム部門の方だった。私は、次のように回答した。

 「自分たちの状況や今必要としていること、困っていることを3ページ程度の資料にまとめ、いつもそれを更新しておくというのはどうでしょう。そして、このような営業さんが来たら、“すみません! 10分だけ、先に話をさせていただけませんか。まずは、うちの事情を紹介しますので。その上で、お話しいただけないでしょうか”と言ってみてはどうでしょう。こうしておけば、常に自分たちの状況も整理しておけるし、相手にも効率良く事情を伝えられるし、一石二鳥ですよ」

 こうお伝えしておきながら、これはどう考えてもおかしな話だと感じた。そもそも、営業としての基本ができていない。私ならこのような営業は出入り禁止にしたいところだ。

 ということで、「私なら、こんな営業は、出入り禁止だ!」の条件を考えてみた。

(1)自分のことばかり話して、こちらのことをいっこうに引き出そうとしない営業

 お客さまは、あなたの会社やその商品、サービスに興味があるわけではない。自分の「困った」を解決して欲しい、「こんなことをやりたい」を助けて欲しいのだ。商品やサービスは手段に過ぎない。それを理解せず、あるいは、こちらの勝手な思い込みで、自分たちのできることばかりを説明し、お客さまの事情もお構いなしに「いかがでしょうか?」と聞かれても、応えようがない。

 また、お客さま自身が、自分の「困った」に気付いていないこともよくある話。現状が整理できていない、あるいは、潜在的な課題に気付いていないこともある。また、新しい法律や制度の改正、トレンドの変化が、お客さまの業種業態、業務にどのような変化を求めてくるのかを理解できていない場合もあるだろう。そのことに気付かせてもあげず、自分たちの自慢話をしても、相手には何のことやら分からない。

 どちらにしても、お客さまが必要性を感じ、自分の課題を解決したいという意欲を持たなければ、どんな話も、「余計なお世話」であることに変わりない。お客さまにどのような課題があり、何を期待しているかを引き出し、それに応えてこそ、お互いの利害は一致する。

 唐突に、しかもたっぷりと時間をかけて自己紹介し、いかに自分は素晴らしいかをとうとうと語り、「私はあなたとお付き合いしたい、いや、付き合うべきです。そうすれば、あなたは幸せになりますよ」とたたみかける人と、私はお付き合いしたいとは思わない。

 ちゃんとこちらの話を聞いてくれる、いや、もう一歩踏み込んで、こちらの状況を引き出し、自分に代って整理整頓し、ならば、こういうやり方ではいかがでしょうと選択肢を示してくれる営業であれば、きっと、真剣に聞き入ってしまうだろう。

 それができない営業の訪問は、時間の無駄なので、出入り禁止にさせていだきたい。

(2)機能や性能の話ばかりして、思想や目的を語らない営業

 製品やサービスは、その前提となる業務プロセスがあって、そこに生ずる課題の解決や、今までできなかったことをできるようにしようと生み出されたものだ。当然、そこには、何らかの想定されるプロセスモデルがあり、目的や思想があるはずだ。

 そのプロセスモデルや思想、目的が、お客さまのそれと一致している、あるいは、近いものでなければ、それを使っても、効果を上げることは難しい。そのことに関心を示すことなく、我が商品は、他社にはない優れた機能や性能を持っていると語られても、「それで一体うちにとってはどれほどの役に立つの?」と、考え込んでしまう。

 例えばパッケージソフトウェアの場合、そこのあたりを曖昧なままに、システムを導入する。当然、ギャップがあるから、カスタマイズで何とかその場のギャップを埋め合わせても、そもそもの思想や目的、プロセスモデルが違うわけだから、使い込めば使い込むほどに、あるいはパッケージのバージョンアップが進むほど、そのギャップは拡大し、カスタマイズもどんどん増えていく。そのうちもはやカスタマイズもできないほどにギャップに開きが出て、ついには塩漬けとなる。

 プロセスモデルや思想、目的を正しく理解すれば、それに業務を合わせてくださいという提案も可能だ。あるいは、その範囲でシステムを使う工夫もできる。

 お客さまは、何でもできる、世界最高、最も安い、などを求めているわけではない。自分の業務の課題を解決できるかどうかだ。これに応えるためには、機能や性能を訴えるのではなく、目的や思想を語り、お客さまの業務プロセスとの親和性を探る必要がある。そこに合意できない製品は、どんなに優れたものでも、余計なお世話だ。

 自分の商品やサービスの前提となるプロセスモデルや思想、目的を熟知せず、ただ、表面的な機能や性能しか語れない営業の口車に乗ると、将来大きな不幸に遭遇するかもしれない。こんなやっかいな存在は、出入り禁止にさせていだきたい。

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