また、前述の例では失敗に拍車をかけた原因がもう1つありました。それは「新ツール導入ありき」のマインドになっていたことです。
A社、B社のいずれも、すでにグループウェアやメールで活発に情報共有を行っていたにもかかわらず、社内ソーシャルのためにあえて別のツールを導入しています。
しかし考えてみてください、ここ数年で個人向けSNSが爆発的に普及し、人々が日々触れる情報共有ツールの数は増加し続けています。一方、業務時間内ではグループウェアやメールを確認するのが最も優先されるはずです。このように「個人的なつぶやきの場」と「業務用の連絡ツール」が混在する今、社内ソーシャル専用ツールのポジションは中途半端なものになり、ユーザーの足が遠のきがちになってしまうのです。
どんな企業でも社内に目を向けてみれば、グループウェアやメールなど、すでに活発に利用している情報共有手段があるはずです。まずはこれらを使って目的とする情報共有を試みてみましょう。やみくもに専用ツールを導入する場合と比べ、格段に成功率が上がるはずです。
以上、社内ソーシャル導入の失敗例を分析することで、成功に向けた2つのポイントが見えてきました。
社内ソーシャルの仕組みを効果的に使うには、まず、自社での活用目的を明文化する必要があります。この目的が「限定的」で「業務に即したもの」であれば、導入効果が見えやすくなり、目的達成に向けて弾みをつけることができるでしょう。
実際にツールを使う現場スタッフの負担を減らすためにも、まずは使い慣れたツールで情報共有を行うことを考えましょう。ここで行う情報共有を、業務の延長として“仕組み化”すれば、一層効果的なコミュニケーションが行えるはずです。
これら2つのポイントをしっかり押さえておけば、社内ソーシャル導入による新たな価値創出はぐっと身近なものになるでしょう。
使い慣れた情報共有ツールを活用するという点では、実はサイボウズユーザーの中にも、グループウェア上で社内ソーシャルの価値を実現している企業がたくさんあります。
次回は、グループウェア内に社内ソーシャルの仕組みを取り入れて成功した企業の事例を紹介しつつ、「社内ソーシャル成功の秘けつ」を一層深く考察していきたいと思います。
・連載「企業内SNSの“理想と現実”」の記事一覧はこちら
伊佐政隆(いさ まさたか)
サイボウズ株式会社でエンタープライズグループウェア「サイボウズ ガルーン」、業務アプリクラウド「kintone」(キントーン)のプロダクトマネージャーとして大手企業への導入提案、製品企画、プロモーションを担当。企業が直面する「情報共有の課題と価値」について常に考え、経験を重ねている。
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