遠州鉄道が“50万人のビッグデータ分析”で実現したこと(2/3 ページ)

» 2014年09月25日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

システム刷新は「非常にスムーズ」 既存インフラを生かして短期間で構築

 同社が分析システムの刷新プロジェクトを始めたのは2011年中旬のこと。「従来の分析ツールの不便さに悩んでいたところ、日本IBMから新たなツールの提案を受けたのがきっかけになった」と中村さんは振り返る。

 採用したのは、IBMのデータ分析ソフトウェア「SPSS Modeler」。「自社で本格的なデータウェアハウスを構築するのと比べてはるかに短期間・低コストで導入でき、なおかつグラフィカルな画面で分析プロセスを構築できる点が決め手になった」(中村さん)

 導入は「非常にスムーズ」に進んだという。「SPSS Modelerはパッケージソフトなので、クライアントPCにインストールするだけで使い始められた。かつ、既存のデータベースシステムからローデータを吸い出して無加工で分析できるため、限りなく短い期間でシステム刷新を完了できた」。こうして同社は2011年12月、新システムの本格稼働をスタートする。

顧客の傾向からバス運行状況まで――高速データ分析で見えたこと

 導入の成果はすでに現れているようだ。「何より分析スピードが圧倒的に速くなった。月次の分析レポーティング作業が従来比ではるかに速く行えるようになり、大幅な業務省力化につながっている」と中村さんは話す。さらに、GUIで構築した分析テンプレートを次回以降の分析にも応用できるようになった点もメリットに感じているという。

photo 新システムでの分析イメージ

 こうした分析のスピードアップは、顧客向けサービスの向上にもつながりつつあるようだ。その成果の1つが、同社が手掛けるパッケージツアーの利用者分析である。

 「地域のお客さまが初めてパッケージツアーに参加してくれた際、それからどれくらいの期間でもう1度参加してくれるとリピーターになりやすいかなど、過去数年分のデータを見ながら傾向分析ができるようになった」(中村さん)。こうして得られた結果をもとに、今後は顧客セグメント別の“おすすめキャンペーン”などにつなげていきたいという。

photo えんてつカード(サンプル)

 このほか、同社グループ内で業種を超えてのデータ活用も行っている。遠州鉄道グループが展開するカーディーラーの「ネッツトヨタ浜松」では、えんてつカードの利用者分析を通じ、「ある一定のカードの使い方をする顧客は来店しやすい」といった傾向を抽出。これに基づき顧客セグメント別のDMキャンペーンなどを展開しているという。

 さらに今後は新たな取り組みとして、同社グループが展開する「遠鉄バス」の運行最適化にもデータを役立てていく考えだ。

 「路線バスがどの停留所を何時に通過し、何人くらいが乗車していたかといったデータは従来から取得してきたが、うまく活用できていなかった。今後は利用データの分析を通じ、例えば“遅延が起きやすい区間はどこか”や、“満員になりがちな区間はどこか”などを可視化し、顧客向けのサービス向上に役立てたい」と中村さんは話す。

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