ガートナーが説く「デジタルビジネス」の勘どころWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2014年11月04日 17時00分 公開
[松岡功,ITmedia]
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これからのIT部門に求められる「2つの流儀」

 ソンダーガード氏は、企業におけるすべてのビジネス部門がテクノロジースタートアップになることについてもこう説明を加えた。

 「私たちの調査では、企業におけるIT支出のうち、現時点(2014年)ですでに全体の38%がIT部門以外のビジネス部門から支出されているという結果を得ている。この割合から、2017年までに全体の50%以上に達するだろう。なぜならば、営業やマーケティング、人事などの部門がデジタル化に取り組むようになり、それぞれがテクノロジースタートアップとして機能することになるからだ」

 こうしたデジタルビジネスの進展に向けて、IT部門はどう対処していけばよいのか。

 ソンダーガード氏は、「これからのIT部門には、堅実性と流動性といった2つの側面が求められる」と言う。同氏によると、堅実性とは、IT部門がこれまで企業全体の基幹システムの面倒を見てきた中で培われてきた信頼性や安全性といった手堅さのことだ。一方、流動性とは、デジタルテクノロジーの活用に向けて柔軟かつスピーディに立ち回ることだ。ガートナーではこの堅実性と流動性を、IT部門における「2つの流儀」と呼んでいる。

 だが、なかなか難しいのではないかと思われるのが、流動性への対応だ。果たして、今の日本企業のIT部門で、デジタルテクノロジーの活用に向けて自信をもって対処していけるところがどれだけあるか。

 この点について同氏は、「それぞれのビジネス部門がテクノロジースタートアップを図る中で、IT部門に今後求められるのは、デジタルテクノロジーを活用するインフラとなるシステムやデータ活用に向けた整備を行うとともに、企業全体としてのセキュリティリスクへの対応や、デジタルテクノロジーを活用できる人材を育成してビジネス部門に輩出していけるようにすることだ」との見解を示した。

 このコメントで興味深いのは、ビジネス部門のテクノロジースタートアップをIT部門がリードしようとせず、インフラやデータ活用、部門間連携、人材といった面で支援する役割を担うべきだと語っていることである。もっと言えば、筆者には「ビジネス部門がテクノロジースタートアップすることを奨励せよ。IT部門はそれをバックエンドで精一杯支えよ」との提言に聞こえた。

 さらにソンダーガード氏は、「こうした企業にとっての大変革に欠かせないものがもう1つある。CEOのリーダーシップだ」とも語った。企業として目指すべき方向を明確に示すのは、当然ながらCEOの役目である。ただ、これも同氏の意図としては、CEOが細かく指示を出すのではなく、むしろIT部門と同様にバックエンドで支える側に回ることを想定しているのではないか。

 大事なのは、それぞれのビジネス部門がテクノロジースタートアップしようという強い意気込みを持つことである。すべてはそこから始まる。ソンダーガード氏が、冒頭に紹介した発言で「スタートアップ」という言葉を使っているのは、そうした意図が込められていると感じた。

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