企業のIT投資は「守り」にシフト、将来の役割描けぬ苦悩も

ITRが実施した調査によれば、2014年度の企業のIT投資動向は積極性に陰りが生じ、IT部門の3〜5年後の役割でも苦悩ぶりが読み取れる。

» 2014年12月04日 07時00分 公開
[ITmedia]

 2013年度の国内企業のIT投資は、2008年の金融危機以前の水準を取り戻す成長となったが、2014年度は再び鈍化傾向に戻ったという。調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)が12月3日に発表した最新の調査結果で企業のIT投資の厳しさが浮き彫りになった。

 2014年度のIT予算について、前年度より増額する企業は、2013年度調査の31.7%から2014年度は23.1%に大きく減少した。ただ、前年度より減額する企業も2013年度調査の13.7%から2014年度は11.5%に減少しており、全体としては前年度の水準を維持するという企業の割合が増加している。

IT予算額増減の経年変化(2013〜2015年度予想)

 IT投資の目的11項目についてその「攻め」度合と重要性を分析した結果、「攻め」度合が高いという「新規ビジネスモデルの実現」や「事業・業務変革」の重要度は低い傾向にあった。逆に重要度の高いものでは「業務効率の向上・コスト削減」「社会的責任」「ITインフラ整備・強化」が挙がった。

 これについて同社は、投資目的が「守り」に偏り、IT予算の確保や配分などの問題以前に、IT投資戦略に関わる当事者が投資案件によって生み出される価値を前向きに捉えていないことがうかがえると指摘する。

 また、同社が取り上げる20項目のIT動向について重要度を尋ねた結果では「IT基盤の統合・再構築」が5連続でトップとなり、以下は「ビジネスプロセスの可視化・最適化」「全社ネットワーク環境の刷新・見直し」「全社的なコンテンツ管理インフラの整備」が続く。

 同社が新分野として挙げる「クラウド」「ビッグデータ」では既に実施もしくは3年以内に実施するとした企業の割合がいずれも3年連続で増加。こうしたことから、新分野への取り組みとそのための基盤整備を重視する様子がみられるという。

 最後にIT部門の役割を現在と3〜5年後でみたところ、「セキュリティ管理」や「システムの安定稼働・障害対応」「システムの機能やパフォーマンスの改善」「ITコスト管理」といった運用に関する項目の割合が大きく減少した。一方で「ホワイトカラーのワークスタイル変革」「ビジネスモデルの開発・改良」「ビジネス・イノベーションの促進」などビジネス戦略に関する項目では割合が増加したものの、運用に関する項目での減少率に比べるとビジネスに関する項目の伸び率は低い。

IT部門の役割(現在/今後)

 従来型の役割に甘んじるIT部門は、将来的に活躍の場を失うことになる恐れがあるという。だが、ビジネスへつながる攻めの役割を担うためにどう変革すべきか、という悩みを抱えていることも読み取れる。

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