シーズからニーズ重視へ──変わりつつあるITベンダーの研究開発最新事情Weekly Memo(1/2 ページ)

ITベンダーの研究開発のあり方が、シーズから「ニーズを重視」する方向に変わってきている。その背景に何があるのか。NECの取り組みを例に考察したい。

» 2014年12月15日 17時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

NECにおける「研究開発のあり方」の変化

photo 記者説明会に臨むNECの江村克己執行役員

 NECが12月9日、自社の研究開発について記者説明会を開いた。同社は毎年この時期に研究開発の活動状況や最新の技術成果を説明する会見を開いているが、今回はその中で非常に興味深い発言があったので、その内容を掘り下げてみたい。

 興味深い発言とは、会見で説明に立ったNECの研究開発部門を率いる江村克己執行役員の次の一言だ。

 「研究開発のあり方が、これまでと正反対の方向に変わってきている」

 どういうことか。それを紐解くために、まずは同社の研究開発をめぐる状況を説明しておこう。

 NECは2015年度(2016年3月期)を最終年度とする中期経営計画のもと、ICTを活用して社会インフラを高度化する「社会ソリューション事業」に注力しており、研究開発もその方針に基づいて取り組んでいる。

 同社はさらに先頃、社会ソリューション事業において具体的な提案を行っていくために、「地球との共生」「安全・安心な都市・行政基盤」「安全・高効率なライフライン」「豊かな社会を支える情報通信」「産業とICTの新結合」「枠を超えた多様な働き方」「個々人が躍動する豊かで公平な社会」といった7つの「社会価値創造テーマ」を策定。それらに共通してICTが生み出す価値の源泉を「安全」「安心」「効率」「公平」の4つに集約した。

 こうしたコンセプトは、当然ながら研究開発にも反映されている。江村氏によると、同社の研究開発におけるプロセスは現在、「7つの社会価値創造テーマから顧客の課題や競合分析などを勘案したうえで、当社が高い価値を提供しうるソリューション領域を絞り込み、それに得意とする技術を適用することで商用ソリューションのプロトタイプを創り出す」という流れになっているという。

photo NECの研究開発プロセス

 ちなみに“得意とする技術”とは同社のコアコンピタンス(他社にまねできない自社事業の大きな強み)となる「ナンバーワン/オンリーワンの技術」で、例えばイレギュラーな動きを検知する「インバリアント分析」や「顔認証」「テキスト含意認識」「異種混合学習」などが挙げられる。また、商用ソリューションのプロトタイプについては「パートナーや先進的な顧客企業と共同開発する機会が増えている」(江村氏)としている。

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