新宿−箱根を結ぶ小田急ロマンスカーをはじめ、関東近県の観光地や都市を結ぶ小田急電鉄。最近、駅係員の手にタブレットがあるのを見かける。この新たに導入したWindows タブレット+Office 365+Intuneの組み合わせは、顧客満足度の向上にどんな役割を果たすのだろうか。
2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催を見据え、交通機関やそのサービス事業者、関連観光地の自治体は訪日外国人に向けたサービスの向上を加速させている。
訪日外国人の約5割超が望む(*)とされる観光客向けの無料Wi-Fiサービスを例にしても、JR東日本とJAL、JR西日本、東京メトロと都営地下鉄、京王電鉄などの鉄道事業者がすでに展開。このほか、KDDIとワイヤ・アンド・ワイヤレスによる富士山五合目に設置したWi-Fiスポットなども存在する。
もちろん無料Wi-Fiだけでは足りない。案内のマルチ言語対応やより有用な地域情報やサービスの提供など、他にもまだ多くやることはある。期待して来日する観光客に向け、その期待を上回るさまざまなサービスと情報提供の手段を、今、各社が模索している。
新宿を起点に展開する小田急電鉄もその1社だ。東京近県の主要観光地の1つである箱根までの約80キロメートル(小田急ロマンスカーなど)、さらに小田原、江ノ島、多摩ニュータウンまでを合わせた約120.5キロメートルの路線規模で、1日に約200万人が利用する。訪日外国人向けのWi-Fiサービスについては、ワイヤ・アンド・ワイヤレスの「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」に参画し、サービスを展開する計画である。
小田急電鉄は「鉄道輸送の安心、安全と顧客満足度のさらなる向上」を目指す。モバイル機器とクラウドサービスを組み合わせて導入した新たなITシステムは、今後同社が目指す姿のどこに寄与するのだろうか。
鉄道会社の役目は、人の生活シーンに「安心、便利、快適」を提供すること。具体的には「安心と安全な鉄道輸送」が極めて重要だ。
鉄道の遅延には、故障や事故、混雑のほかに、災害や土砂崩れなど気象に由来する不慮な要因もあり、問題の完全な回避は不可能である。ただ「問題が生じたときに、いかに迅速に対応し、顧客に安心してもらえる情報や手段を提供できるか」。この対策も鉄道会社の基本として、顧客満足度に直結するポイントになる。
鉄道業界における情報伝達手段は「音声通信」が一般的だった。運輸司令所を中心とした鉄道内線や列車無線によって、情報を「口頭」で駅係員や乗務員に伝える。最近では、列車の遅れなどの情報を視覚的に把握できる「TID(Traffic Information Display)」と呼ぶシステムや、メールで伝達できる各駅に配備する業務システム用PCなど、より速く、正確に情報を伝達するための端末やシステムも活用されるようになってきた。
「ただ、これらの端末は有線ネットワークで接続されており、機動力に欠ける課題があった」という。
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