小田急電鉄は東京都内の2つの地下駅に、地中熱を利用した空調システムを導入した。駅の直下の床に熱交換器を設置して、ホームの空調に利用する。1年を通して温度が変動しない地中熱を利用することで空調の効率を高めることができ、年間のランニングコストを30%削減できる見込みだ。
小田急電鉄は東京都の世田谷区で複々線化事業(上下線を各2本ずつの線路に拡張する事業)を進めている。トンネル工法を使って線路と3カ所の駅を地下に移動するのと合わせて、2つの駅に地中熱を利用する空調システムを導入した(図1)。
地中は地上と違って、夏と冬の温度がほとんど変わらない。この特性を生かして、夏は冷房によって生じる熱を冷たい地中に排出する一方、冬は暖かい地中の熱を取り込んで暖房に利用することができる。空調の効率が良くなり、電力やガスの使用量を削減できるメリットがある。
小田急電鉄が採用した地中熱利用システムは「水平方式」と呼ばれるもので、駅のトンネルの下にある床の部分にコイル型の熱交換器を設置した(図2)。この熱交換器が空調システムのヒートポンプと連動して冷暖房の熱源になる仕組みだ。通常の空気を熱源に使う空調システムと比べて、年間のランニングコストが約30%削減できることを見込んでいる。
水平方式の地中熱利用システムは、熱交換器を地中に垂直に設置する方式と比べて工事が簡単に済む特徴がある(図3)。開発したのは三菱マテリアルテクノで、環境省の「地球温暖化対策等技術開発事業」を通じて九州大学や九州電力などと共同で実用化した。鉄道のトンネルに採用されたのは初めてである。
三菱マテリアルテクノは地中熱利用システムの施工を数多く手がけていて、最近では東京スカイツリーに設置した実績がある。東京スカイツリーでは地下を深く掘削する「ボアホール方式」を採用した。
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