初開催の「長期脱炭素電源オークション」の結果が公表、蓄電池は30件・109万kWの落札にエネルギー管理(1/3 ページ)

脱炭素電源への新規投資を促進することを目的として創設された「長期脱炭素電源オークション」。このほどその第1回オークションの結果が公表された。

» 2024年05月09日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 電力の中長期的な安定供給確保や、卸電力市場の価格高騰リスクの抑制を目的として、国全体の供給力を効率的に確保する仕組みである容量市場が、2020年度から開始された(実需給は2024年度から)。しかしながら、容量市場メインオークション落札案件の大半は既設電源であり、必ずしも電源の新設につながっていないことが課題とされていた。

 そこで、電源投資(特に初期投資等の固定費の回収)の長期的な予見可能性を高めるとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素電源への新規投資を促進することを目的として、長期脱炭素電源オークションが導入された。

 2024年1月に初めての当該オークションの入札が行われ、4月26日にその約定結果が電力広域的運営推進機関から公表された。

図1.長期脱炭素電源オークションの概要 出典:広域機関

長期脱炭素電源オークションの仕組みの振り返り

 長期脱炭素電源オークションは容量市場の一部であるため、容量市場メインオークションと共通点も多いが、異なる点もあるため、長期脱炭素電源オークション(以下、長期AX)の仕組みを振り返っておきたい。

 容量市場メインオークションの約定価格が原則、シングルプライス方式で決まるのに対して、長期AXではマルチプライス方式により、落札電源の応札価格が約定価格となる。

 また、国民負担軽減の観点から、長期AXの落札事業者は卸市場や非化石市場等の他市場で得た収益の85〜95%の金額を広域機関に還付することが求められる。

表1.容量市場メインAXと長期AXの主な違い 出典:広域機関

長期脱炭素電源オークションの対象電源と募集量

 長期脱炭素電源オークションが対象とする電源は、脱炭素電源の新設・リプレースおよび既設火力の脱炭素化への改修における新規投資である。ただし、「CCS(CO2回収貯留)付火力」や「アンモニア混焼を前提としたLNG火力の新設・リプレース」、「合成メタンを燃料とする発電所」も本制度の対象であるが、現時点では応札が想定されないこと等を踏まえ、2023年度のオークションでは対象外とされている。

 また、短期的な電力需給逼迫防止の観点から、2023〜2025年度の3年間は、LNG専焼火力の新設・リプレースも対象とされている。LNG専焼火力であっても、制度趣旨に則り、供給力提供開始から10年以内に脱炭素化に向けた対応を開始し、2050年までに脱炭素化を完了することが応札条件とされている。

表2.長期脱炭素電源オークションの対象電源(2023年度応札) 出典:広域機関

 2023年度長期AXにおける脱炭素電源の募集量は400万kWであり、LNG専焼火力は脱炭素電源とは別に、2023〜2025年の3年間で600万kWの募集量が設定されている。

 既設火力の改修案件(水素・アンモニア混焼及びバイオマス専焼)及び蓄電池・揚水は、それぞれ100万kWが募集上限であるが、落札電源の総容量が脱炭素電源の募集量に達しない場合は例外的に、蓄電池・揚水・既設火力改修の案件は、脱炭素電源の募集量に達するまで、追加的に落札可能である。

図2.蓄電池・揚水・既設火力の募集上限と追加の例 出典:制度検討作業部会

 長期AXで落札した電源が容量収入を得られる期間(制度適用期間)は、2027年度以降の原則20年間であるが、事業者は20年よりも長期の適用期間(1年単位)を希望することも可能である。

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