インバウンド需要が急増するなか、航空燃料(ジェット燃料)の不足が大きな課題となっている航空業界。政府は対応に向け設置したタスクフォースを設置し、7月には「航空燃料供給不足に対する行動計画」を取りまとめた。
政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」において、2030年の訪日外国人(インバウンド)旅行者数を6,000万人、インバウンド旅行消費額を15兆円との目標を掲げているが、新型コロナウィルス感染拡大により、いずれも激減していた。
2023年には、各国の海外旅行解禁の動きを受け、インバウンド旅行者数は2019年比79%の2,507万人まで回復し、国際線の2024年夏ダイヤは、コロナ前の95%まで便数回復が見込まれている。ところが、外国エアラインの新規就航等において、全国各地で週140便に相当する航空燃料(ジェット燃料)の供給ができない事態が生じている。
この問題がインバウンドの足かせとなり、日本経済の発展を阻害することのないよう、政府は「航空燃料供給不足への対応に向けた官民タスクフォース」を設置。官民共同で今後の対応策について検討を進めてきたが、7月に「航空燃料供給不足に対する行動計画」が取りまとめられた。今回の取り組みにより、アジア便で週150便に相当するジェット燃料の供給力確保が可能となった。
石油連盟によれば、2023年度の国際線向けジェット燃料(航空燃料)の出荷量は、2019年度とほぼ同じ水準であり、国内生産を基本としつつ、必要に応じて輸入することで、必要量の確保に最大限努めている。
ジェット燃料(航空燃料)やガソリン・灯油・軽油・重油等の石油製品は、原油から製油所の蒸留装置や分解装置によって沸点の差を用いて「連産品」して同時に生産されており、原油から特定の石油製品だけを生産することは不可能とされている。無色透明に近いジェット燃料やガソリン・灯油等は、「白油」とも呼ばれる。
ジェット燃料の需要は今後も堅調に推移する見込みであるのに対して、石油製品全体(電力用C重油を除く)の需要は、2028年度は2023年度比で▲7.6%、年平均で▲1.6%の減少が続く見通しとなっている。
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