インバウンド急増で生じた航空燃料不足、その原因と対応策は?「航空燃料供給不足への対応に向けた官民タスクフォース」(2/4 ページ)

» 2024年07月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

進む製油所の減少、輸送距離は増加傾向に

 このような石油製品の需要減少により、近年、製油所の統廃合が進んでおり、国内の製油所数及び原油処理能力は減少傾向が続いている。

図5.国内の製油所数及び原油処理能力の推移 出典:石油連盟

 製油所で生産されたジェット燃料は、各製油所から内航船により油槽所に転送し、油槽所から各空港へローリーで輸送するなど、2段階で輸送するケースが最も一般的な輸送経路となっている。沿岸部の空港に対しては内航船で直接輸送するケースや、製油所近接の内陸部の空港に対してはローリーで直接輸送するケースもある。全国各地の製油所の閉鎖に伴い、石油製品の平均輸送距離は増加傾向にある。

図6.ジェット燃料 空港への主な輸送経路 出典:航空燃料供給不足への対応に向けた官民TF

ジェット燃料の内航タンカー輸送の現状

 現在、石油製品全体の8割以上が内航海運により輸送されており、先述のとおり、ジェット燃料においても内航海運は主要な輸送手段となっている。

 内航海運業界は、オペレーター(運送事業者)の99.7%が中小企業であり、オーナー(船舶所有者)の中でも保有隻数が1隻のみであるいわゆる「一杯船主」の割合が60%以上を占めている。

 石油製品輸送は、内航海運の中で最も荷主ごとの専属化・系列化が進展しており、その都度の需要に応じて輸送を提供するいわゆる「フリー船」は、現在は消滅している。専属化・系列化によって、荷主・オペレーターの業務は一体化しており、現在、油槽所等の在庫管理と内航タンカーの配船は一体のものとして行われている。

図7.石油輸送配船等の手配の流れ 出典:日本内航海運組合総連合会

 ジェット燃料を輸送する「白油タンカー」の代表的船型である5,000kL積には、5つのタンクがあり、灯油・ガソリン・ジェット燃料など複数の種類の石油製品を組み合わせた積載・輸送が可能である。

 白油タンカーの隻数は減少傾向にあるが(2024年3月末時点、281隻)、そのタンク容量(船腹量)は増加傾向にある(約98万m3)。つまり、船の大型化が進んでいる。

図8.内航海運の白油タンカー 出典:日本内航海運組合総連合会

 オペレーター・船主の努力により、内航タンカーの船員数は維持されているものの、危険物を取り扱うタンカー船員の育成には時間が掛かる。また船員法改正(2022年4月施行)により、船員の労働時間管理が厳格化されたことに伴い、船員の待機日の設定が必要となったため、法改正前と同じ船腹量・船員数であっても船の稼働率等が低下し、輸送可能量が減少している。

 このような内航タンカーの実質的な稼働可能量の減少が、ジェット燃料供給不足の大きな一因となっている。

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