インバウンド急増で生じた航空燃料不足、その原因と対応策は?「航空燃料供給不足への対応に向けた官民タスクフォース」(3/4 ページ)

» 2024年07月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

ローリー乗務員・空港給油作業員の不足も課題に

 この他、国際線向けジェット燃料供給不足の要因としては、タンクローリー乗務員の不足が指摘されている。全国的にトラック乗務員数は減少しているほか、トラック等乗務員の労働時間規制が2024年4月から適用開始されている。タンクローリー乗務員は、危険物取扱者資格や牽引免許等の資格取得が必要であるため、急な乗務員確保が困難である。

 また、空港給油事業者における給油作業員の確保も課題である。航空機が空港に到着してから出発するまでの限られた時間内で、特殊な給油車両を使い、航空機の翼や胴体にある燃料タンクへ給油する必要があるが、航空会社ごとに異なる給油プロトコルが、作業の効率化の妨げとなっている。

航空燃料供給不足に対する行動計画【短期の取り組み】

 官民TFは、航空燃料供給不足に対する行動計画を、直ちに取り組むべき【短期の取り組み】と、2025年度以降を見据えた【中長期の取り組み】に分けて検討を行った。

 まず、短期的にはジェット燃料需要量の把握が重要であるため、空港会社等において、新規就航・増便等の確度の高い情報を収集・整理し、時間的余裕を持って石油元売会社等に提供する仕組みを構築する。元売会社は、提供された情報を基に、サプライチェーンの状況を確認し、対応を図ることとする。

 また、直接的な供給力確保策として、商社や石油元売会社が空港会社等と連携して航空燃料を輸入し、空港の給油タンクへの直接搬入を実施する。この第1号案件として、伊藤忠商事は韓国からジェット燃料5,000kLを輸入し、成田空港に直接納入する。これはアジア便300便に相当する燃料となる。

 また、資源エネルギー庁はエネルギー供給構造高度化法に基づき、人手不足等により長期化している製油所の定期修繕時に、他の製油所で必要分を増産する特例的な運用を認めることとした。これにより、アジア便140便/週相当のジェット燃料の追加生産が可能となる。

 短期的な輸送体制の強化策として、石油元売会社と運送会社は、ローリー予備車や乗務員を追加確保することにより、製油所から地方空港へ月15,000kL(アジア便150便/週相当)のローリー直送を増加させる。

 内航海運については、既存の船舶を活用した積荷・運送計画等の変更や、外航船の日本籍内航船への転用などにより、輸送力を強化する。これは、カボタージュ制度により、国内港間の沿岸輸送は日本船籍の船舶に限られているためである。

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