「需要家」「発電事業者」「小売事業者」、オフサイトPPAにおける各プレーヤーの収益性が明らかになった。太陽光発電協会とEPIコンサルティングが、オフサイトPPAの実態調査を実施し、普及に向けた提言を取りまとめた。
自社敷地内での太陽光発電が難しい場合でも、再エネ導入を進めることができる「オフサイトPPA」。需要家にとっては、電気料金の変動リスクをヘッジできるメリットも大きい。発電事業者はFITに頼ることなく長期固定価格での売電先が確保でき、小売事業者にとっては再エネ電力を安定した価格で調達できるなど、それぞれにメリットのある優れたスキームだ。
太陽光発電協会(以下、JPEA)は、EPIコンサルティング(以下、EPI)と共同で、2020年から2023年に運開した太陽光発電所を調査し、オフサイトPPAの現状と収益性などを分析した。併せて、太陽光オフサイトPPAの普及に向けた提言を発表した。以下、その内容を抜粋してお届けする。なお、この調査は、経済産業省の補助事業「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」の採択案件を中心とする計100の太陽光発電所を対象に、アンケートやヒヤリングを通して行われた。
表1は、2023年1月運開の太陽光オフサイトPPA事業に関係する「発電事業者」「小売事業者」「需要家(高圧需要家)」、それぞれの収益性を分析した結果を整理したもの。高圧需要家向けの太陽光発電コストは10.5円/kWhであるが、補助金適用により3.5円/kWh低下し、補助金適用後の発電コストは7.0円/kWhとなる。発電事業者から小売事業者への売電単価は10.9円/kWhであることから、発電側課金1.0円/kWhを除けば発電事業者は2.9円/kWhのマージンを確保できている。
小売事業者から高圧需要家への小売単価は21.6円/kWhであり、ここから買電単価10.9円/kWh、送電ロス0.4円/kWh、発電インバランス1.0円/kWh、託送費5.9円/kWhを引くと、小売事業者のマージンは3.4円/kWhと考えられる(発電インバランスはアンケートやヒアリングを基にEPIが推計した値)。
オフサイトPPAにおいて高圧需要家が契約する小売単価は21.6円/kWhであり、旧一電の標準電気料金25.5円/kWhと比較した場合、環境価値を含めずとも需要家は3.9円/kWhのコストメリットを得ている。結果として、補助金3.5円/kWhの投入に対し、発電事業者、小売事業者、需要家の全事業者で計10.2円/kWhに相当するマージンやコストメリットが得られており、補助金が効果的に機能している。
表2は、2023年10月運開のオフサイト発電所におけるオフサイトPPAの収益性分析結果だ。高圧需要家向けの太陽光発電コストは10.4円/kWhであり、発電事業者は3.6円/kWhのマージンを確保している。小売事業者から需要家への小売単価は24.1円/kWhであり、小売事業者のマージンは4.1円/kWhである。
比較対象の電気料金は、2023年1月はロシアのウクライナ侵攻により、天然ガス・石炭の価格が高騰したため25.5円/kWhまで値上がりしていた。しかし、2023年11月にかけて天然ガス・石炭の価格が下落し、基準価格が変更された結果、電気料金は19.1円/kWhまで低下した。そのため、需要家にとっては、旧一電の標準電気料金19.1円/kWhと比較した場合、環境価値を含めなければコストメリットを得にくい構造となっている。
このように2023年10月運開案件においては、補助金投入額3.7円/kWhに対し、発電事業者および小売事業者は計7.7円/kWhの付加価値を得ているが、需要家がコストメリットを得るためには環境価値を見込むか燃料価格が一定以上に高まる必要がある。
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