「蓄電コンクリート」を実用化へ、會澤高圧コンクリートとMITが連携蓄電・発電機器

會澤高圧コンクリート(苫小牧市)とマサチューセッツ工科大学(MIT)は、MITが研究開発を進める電子伝導性炭素セメント材料「ec3」(蓄電コンクリート)の実用化に向け、共同研究コンソーシアムを設立することで合意したと発表した。

» 2024年04月16日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 會澤高圧コンクリート(苫小牧市)とマサチューセッツ工科大学(MIT)は2024年4月11日、MITが研究開発を進める電子伝導性炭素セメント材料「ec3」(蓄電コンクリート)の実用化に向け、共同研究コンソーシアムを設立することで合意したと発表した。

 ec3とは、MIT土木環境工学部のフランツ・ヨーゼフ・ウルム教授と、アドミール・マシック准教授らの研究チームが開発を進めるセメント系素材。カーボンブラックと呼ばれる炭素の微粒子をコンクリートに添加することで、コンクリート系素材に自己加熱性や電気を貯める蓄電性を持たせることができる。

カーボンブラック 出典:會澤高圧コンクリート

 通常コンクリートに配合される水には、水和反応に寄与しないがワーカビリティの確保に必要な水分も含まれる。この余分な水分はコンクリート内部でアルカリ性の水となり、その後蒸発することで、コンクリート内に無数の細孔を形成する。

 一方、コンクリートに混ぜ合わせるカーボンブラックは、疎水性の性質を持っているため、セメントペーストとして取り込まれずに、余分な水分とともにコンクリート内に固定される。また、アルカリ性の水が蒸発することで、カーボンブラック粒子がこれらのセメントペースト内の細孔にワイヤー状の構造を形成する。

カーボンブラックが広がる様子 出典:會澤高圧コンクリート

 このワイヤー状のカーボンブラックは幾何学的な構造をしており、網の目のようにつながり合うことで、コンクリート内で大きな表面積を形成する。このコンクリートを電解質溶液に浸漬すると、細孔にも電解質溶液が満たされ、カーボンブラック上に電子が集まり蓄積する。これがec3が「蓄電コンクリート」と呼ばれる仕組みだ。

 MITではこれらの材料で作られた蓄電コンクリートによる2つの電極が絶縁体で分離され、それぞれの電極に多くの電子が蓄積することで、非常に強力なスーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)を形成することを発見した。一般的な蓄電池とは異なり、蓄電コンクリートは化学反応を必要とせず、電極間を電子が移動するだけなので長期的な活用や、メンテナンス不要といったメリットも期待できるという。

 また、MITではこの蓄電コンクリートを戸建て住宅などの基礎に用いることで、コストをほとんど変えずに丸1日分の電気エネルギーを蓄えることが出来ると試算している。

スーパーキャパシタに電気が集まる様子 出典:會澤高圧コンクリート

 今回設立したコンソーシアムでは、會澤高圧コンクリートとMITで合計5名による共同運営委員会(JSC)を設け、共同開発のマイルストーンの設定や進捗を管理する。また、同社がが特別目的会社(SPC)を設立し、開発資金の調達や管理、ライセンスビジネスの設計管理などを行う計画だ。また、同社が主催する「aNET ZERO Initiative」などを通じて、全国に本技術のサプライチェーンを築く他、住宅・建設業界や自動車などのモビリティ、電力エネルギー産業からのコンソーシアムへの参加を促し、脱炭素社会の実現に向けた産業連携も推進する。

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