次世代の太陽電池として普及が期待されている「ペロブスカイト太陽電池」。その開発動向や市場創出に向けた日本政府の投資戦略などを紹介する。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、主力電源の一つとして太陽光発電のさらなる導入拡大が必要とされている。しかしながら、日本は既に平地面積当たりの太陽光導入量は主要国で1位であり、地域との共生を前提に低コストで事業を実施するためには、立地制約の克服が鍵となる。
このため、耐荷重の小さい屋根やビルの壁面等、既存の太陽電池では設置できなかった場所にも導入を進めるため、軽量・柔軟等の特徴を兼ね備え、変換効率や耐久性等の性能面でも既存電池に匹敵する次世代型太陽電池の開発が不可欠とされている。
このような次世代型太陽電池の一つが「ペロブスカイト太陽電池」であり、「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」の第57回会合では、ペロブスカイト太陽電池の開発動向が報告された。
太陽電池にはさまざまなタイプがあるが、大きくシリコン系、化合物系、有機系の3種類に分類され、現在普及している太陽電池の95%以上はシリコン系太陽電池である。
有機系太陽電池の多くは研究開発段階にあるものの、ペロブスカイト太陽電池は、直近の7年間で変換効率が約2倍に向上するなど、世界的に急速な技術開発が進められており、シリコン系に対抗し得る太陽電池として有望視されている。
ペロブスカイト太陽電池(Perovskite Solar Cell:PSC)とは、ペロブスカイト結晶構造を有する材料を発電層として用いた太陽電池の総称であり、他の方式の太陽電池と比べて、少ない製造工程で製造が可能であることや、プラスチック等の軽量基板の利用が容易であり、軽量性や柔軟性を確保しやすいことが特徴とされる。
また将来的には、シリコン系や化合物系などの異なる太陽電池との組合せ技術(タンデム化)の進展により、性能面でもシリコン系を大きく越えることも期待されている。
他方、現状では、耐久性が低く製品寿命が短い、大面積化が困難、変換効率が低いなどの課題が存在する。
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