2024年度の「供給計画」から考える、10年後の電力需要と供給力の変化エネルギー管理(1/5 ページ)

このほど電力事業者各社から提出された、2024年度の「供給計画」がとりまとめられた。とりまとめでは電力需要想定や需給バランス、電源構成の変化に関する分析、送配電設備の増強計画などが報告されており、本稿ではそこから見える長期視点での課題を解説する。

» 2024年04月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 電力の安定供給実現のため、発電所や送電線等のインフラを適切に整備するには長期的な計画が必要とされる。このため、電気事業法ではすべての電気事業者に対して、今後10年間の電気の供給計画や電源、送電線等の開発についての計画を作成することを求めており、これが「供給計画」と呼ばれるものである。

 電気事業者各社から提出された供給計画は、広域的運営推進機関にて取りまとめを行い、安定供給の観点からの意見を添えて、国(経済産業大臣)に報告される。もし供給計画が、電気の安定供給の確保や電気事業の総合的かつ合理的な発達を図るため適切でない場合、国は電気事業者に対し、その供給計画を変更すべきことを勧告することができる。

表1.2024年度供給計画取りまとめ対象事業者数 出典:供給計画取りまとめ

 「供給計画取りまとめ」では、電力需要想定や需給バランス、電源構成の変化に関する分析、送配電設備の増強計画、電気事業者の特性分析等が報告されており、本稿では2024年度供給計画取りまとめから見える課題等を報告したい。

今後10年間の全国電力需要想定

 電力の需要は、人口や経済成長により変動するため、広域機関では将来の経済見通しを策定・公表している。その10年後GDP・IIP想定値は、昨年度の供給計画よりも上方修正されている(※表2、表3の括弧内%は2023年度実績に対する年平均増減率)。

表2.需要想定の前提となる全国の経済見通し 出典:供給計画取りまとめ

 8月の最大3日平均電力(H3需要)の過去実績と2033年度までの見通しは、表3及び図1のとおりである。昨年度の想定と比べ、2023年度はテレワーク実施率の低下等による在宅需要の減少や節電・省エネ影響等に伴い減少する一方、2024年度以降は、経済成長及びデータセンター・半導体工場の新増設に伴い増加傾向の見通しとしている。

表3.需要想定(全国合計、送電端) 出典:供給計画取りまとめ
図1.最大3日平均電力の実績と今後の見通し 出典:供給計画取りまとめ
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