2024年度の「供給計画」から考える、10年後の電力需要と供給力の変化エネルギー管理(3/5 ページ)

» 2024年04月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

電源の調整能力の推移

 変動性再エネ電源の増加に伴い、調整力の重要性が高まっているほか、2024年度から需給調整市場が全面運開することから、供給計画においても2024年度から、調整機能を有する発電事業者等に対して、調整能力の報告を求めるよう供給計画の様式が変更された。調整能力には様々な定義があり得るが、供給計画では、一般送配電事業者からオンライン制御が可能な設備の場合は、出力変動幅(図5の赤枠部分)を報告する。

図5.調整能力(出力変動幅)のイメージ 出典:供給計画取りまとめ

 発電事業者・小売電気事業者・特定卸供給事業者から提出された「調整力に関する計画書」に記載された出力変動幅等を積み上げたものが図6である。電源等の休廃止・新増設に伴い、年度毎に増減はあるものの、今後10年間は2023年度と同水準を維持する見通しである。また、蓄電池が次第に増加する傾向があるものの、調整力の構成は今後10年は大きく変わらない見通しである。

図6.調整能力の見通し 出典:供給計画取りまとめ

送電端電力量・設備利用率の見通し

 供給計画作成においては、発電事業者は自らの将来の販売電力量を予想した上で、現時点で稼働可能な状態にあると想定する電源等について、規制的措置による効果等を考慮しない前提で、運転コストが安いものから機械的に発電電力量を積み上げて計上している。つまり、原子力発電の今後の稼働状況や非効率石炭火力の発電量の抑制効果等は考慮されていないため、実際の発電電力量とは異なる可能性があることに留意が必要である。

 このような一定の仮定の下で計算した各年度の電源種別の発電電力量(送電端)等の見通しは表6のとおりである。

表6.電源別 送電端電力量の見通し 出典:供給計画取りまとめを基に筆者作成

 表5の設備容量や表6の送電端電力量から機械的に算出した電源種別の設備利用率が表7及び図7である。先述のとおり、送電端電力量は一定の仮定の下で計算しているため、設備利用率についてもその正確性には留意が必要であるものの、LNGや風力・太陽光で設備利用率が低下傾向にある。

 比較のため、表7では「2023年度供給計画取りまとめ」から、10年後(2032年度)の数値を加えたところ、2033年度には多くの電源種で設備利用率の下方修正が行われていることが分かった。「供給計画取りまとめ」ではこの理由は説明されていないが、再エネ電源の増加による出力制御の増加が一因であると推察される。

表7.電源種別の設備利用率 出典:供給計画取りまとめを基に筆者作成
図7.電源種別の設備利用率 出典:供給計画取りまとめ

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