「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?太陽光(2/4 ページ)

» 2023年12月13日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

国内外におけるペロブスカイトの技術開発の動向

 上記の課題を踏まえ、ペロブスカイト太陽電池の実用化には、「1.実験室サイズでの性能向上」「2.大型化・耐久性向上」「3.実装・実用化」といった3つの開発工程が必要とされる。

 国の「次世代型太陽電池の開発」プロジェクトでは、図4のような委託事業・補助事業を通じて、基礎技術・要素技術・量産技術の確立と実証試験を行う予定としている。

図4.「次世代型太陽電池の開発」プロジェクトの概要 出典:グリーン電力の普及促進等分野WG

 ペロブスカイト太陽電池では、その変換効率と耐久性を決定付ける材料(原液の組成)と温度管理手法等の製造プロセスの最適化や、結晶構造や材料同士の接合等の最適化に係る基盤要素技術の開発が必要とされる。また、耐久性の向上に不可欠となる劣化要因を分析する技術や有機系特有の温度等による性能変化などを踏まえて、太陽電池性能を適切に測定・評価する手法・技術等の開発も必要となる。

 ペロブスカイト太陽電池の製造には、高度な塗布技術が用いられ、このような技術を持つ日本企業に優位性があるほか、主要な材料である「ヨウ素」の生産量は、日本が世界シェア30%(世界2位)を占めており、特定国からの原料供給状況に左右されにくい強靭なエネルギー供給構造の実現にもつながる技術である。

 ペロブスカイト太陽電池は、欧米や中国を中心に技術開発競争が激化しているが、日本の企業や研究機関は世界最高の変換効率のモジュールのプロトタイプを開発するなど、現在もトップグループに位置しており、特に製品化の鍵となる大型化や耐久性の分野で世界をリードしている。

図5.ロール to ロール製造技術の例 出典:積水化学工業

 世界各国では、ペロブスカイトを「シリコン系に対抗しうるゲームチェンジャー」と位置づけ、長期的にはシリコン系と置き換えることも念頭に、官民を挙げた研究開発が活発化している。例えば米国では、NREL等の国立研究所が中心となり官民共同で「米国先進ペロブスカイト製造コンソーシアム(US-MAP)」を設立し、基盤技術や製造技術、評価手法の開発等に取り組んでいるほか、欧州(EU)においても、官民によるプラットフォームが設置され、共同で基盤技術や製造技術の開発等を進めている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.