「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?太陽光(3/4 ページ)

» 2023年12月13日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

ペロブスカイトのコスト目標と市場規模

 ペロブスカイト太陽電池を、既存の太陽電池に対抗しうる電池として開発していく上では、将来的に既存の太陽電池と同等のコストや性能を達成する必要がある。

 まずは、既存の太陽電池が設置できなかった場所に着実に導入することを目指し、2030年までに14円/kWh以下(産業用電気料金並み)のコスト水準を目指す。その中間目標(キーマイルストーン)としては、一定条件下(日射条件等)での発電コストを2025年度までに20円/kWhを見通せる技術の実現を目指すこととしている。

 また、市場規模(全世界)の想定については、グリーンイノベーション基金事業の「次世代型太陽電池の開発」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画(改定案)において、2030年時点と2050年時点の導入量が示されている。

 太陽光発電は2021年に世界全体で174GWが導入され、2030年までこのペースで導入が進むと仮定する。2030年時点では、次世代型太陽電池の市場はまだ限定的であると考えられるため、世界の太陽電池市場のうち次世代型太陽電池が「1%」を占めると仮定すると、その導入量は約4.3GWと想定される。金額では、2030年の太陽光発電全体で約25兆円のうち、次世代型では約2,500億円と想定される。

 さらに、太陽光発電は世界全体で2030年から2050年に向けて年間平均275GW程度のペースで導入されると推定されている。NEDOによると、2050年に次世代型太陽電池等の技術により期待される市場は、太陽光発電市場全体の50%と推定されている。これを前提に2030年頃から徐々に次世代型太陽電池が普及すると仮定すると、その累計導入量は、約1.4TW(テラ=1兆W)と想定される。金額では、太陽光発電全体で約57兆円のうち、次世代型では約28.5兆円と想定される。

次世代型太陽電池のGX投資戦略の概要

 国は、次世代型太陽電池をGX(グリーント・ランスフォーメーション)戦略の重点分野の一つと位置付け、分野別GX投資戦略(案)を策定したところである。

 ペロブスカイト等の次世代型太陽電池に対しては、グリーンイノベーション(GI)基金によるR&D支援や大規模実証を行うなどにより、「量産技術の確立+生産体制整備+需要の創出」に三位一体で取り組む方針を示している。

 GI基金を通じた「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」(648億円)では、基礎的な性能向上や大型化・耐久性向上、屋外環境における性能維持などをテーマとした研究開発を進め、2030年までの社会実装を目指す。

 また、2030年までの早期にGW級の量産体制構築に取り組むため、「GXサプライチェーン構築支援事業(2024年度1,171億円(国庫債務負担行為要求額5,785億円))」を通じて、Tier1に限らず、Tier2以下も含めたサプライチェーン全体に対する生産体制整備支援を実施することで、高い産業競争力を有する国内製造サプライチェーンの確立を目指す。

 GX分野別投資戦略における次世代型太陽電池の今後10年程度の目標は、20兆円以上(約31兆円の内数)の官民投資を行うことにより、国内排出を約2,000万トン削減する目標としている。

図6.次世代型太陽電池のGX分野別投資戦略 出典:GX実現に向けた専門家WG

 なお、立地制約を克服し得る軽量・柔軟な次世代型太陽電池は、ペロブスカイトに限らないため、他の方式による次世代型太陽電池についても、引き続き可能性を追求していくことが、投資戦略には明記されている。

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