「IBM Verse」は、オフィスワーカーの“何”を変えるのか「働き方の革新は、もう“マスト”」それならば?(1/2 ページ)

日本IBMが企業担当者を対象としたセミナー「IBM Verse Day」を開催。「ユーザーを理解するメール」とうたう新たなメールソリューションは、企業のどんな課題を解決し、何を変えるのか。

» 2015年03月18日 17時00分 公開
[ふじいりょうITmedia]

 「ユーザーを理解するメール」──とは?

 ビジネスパーソンは「1週間の業務時間のうち、28%をEメールの処理に費やしている」という。自身が処理しないと業務が滞る。Eメールや電話に加え、Webチャット、Web会議、スマートデバイスを通じたコミュニケーションなど、コラボレーション手段の幅は広がっている。ただ、正式に会社より与えられたツールだけではこのワークプレースに対応できておらず、生産的ではないと感じている。

 この状況をふまえ、“Eメールを根本から考え直す”新しい法人向けメールソリューションが登場する。「IBM Verse」だ。IBMのメールサービス「IBM SmarterCloud Notes」や解析サービス「IBM Digital Analytics」などを利用し、「人」を中心としてメール、スケジュール、ファイル共有、チャット、SNSといったコミュニケーション手段を再統合。高度な自動分析機能を使い、重要なタスクを優先表示し、人、ファイルなどの情報を検索する機能を持つ。

photo メール、スケジュール、ファイル共有、チャット、SNSなどのコミュニケーション機能を再統合し、さらに新たな考え方を組み込んだ「IBM Verse」

 2014年11月18日に行われた米国での発表にともない、ソーシャルメディアの反応が約3億8400万インプレションに及んだという。これまでの概念を覆し、業務効率を飛躍的に高める手段の一手として関心と期待を集めているようだ。IBM社内においてもVerseを統括するソーシャル事業部が、2015年2月にソフトウェアグループから社長直属へと体制が変更されており、戦略的な位置付けを強めている。すでに全米では製品のCMを放映し始め、日本でも2015年4月以降での展開を予定している。

 日本IBMは2015年3月末のリリースに先駆けて、企業担当者を対象としたセミナー「IBM Verse Day」を東京、大阪、名古屋、福岡、仙台の5都市で開催。新ソリューションを展開する背景や機能、そして自社内での導入、活用事例を紹介した。

 IBM Verseの狙いは、生産性の向上、就労形態の多様化、クラウドとモバイル、ソーシャルを利用したワークスタイルへの対応し「革新的な働き方を実現する」ことだという。このキモとは何だろうか。

企業に求められる「生産性の向上」

photo 日本IBM ソーシャル事業部理事事業部長の田崎慎氏

 IBM Verseが目指すのは「新時代を見据え、オフィスを大きく革新させること」だ。このキーメッセージはセミナーを通じて強く何度も伝えられた。「企業経営にとって、今や働き方の革新は”マスト”な状況。このままのIT環境ではコラボレーションの基盤ではこれ以上の生産性は望めないことは明白。クラウドとモバイルは改革を実現可能にする有力な手段」(日本IBM ソーシャル事業部理事事業部長の田崎慎氏)。

 日本のビジネス環境の現実もその背景にある。日本の労働生産性は先進7カ国中で最下位、OECD加盟34カ国中でも22位。米国の3分の2ほどしかないという。また、日本の労働力人口は少子化により減少の一途を辿っているのも逆風だ。内閣府有識者委員会「選択する未来」が2014年3月に示した資料によると、2013年に比較した2060年の労働力人口は、もっとも悲観的に考えて42%、楽観的に考えても18%は減少すると予測されている。


photo 日本は特に、生産性向上と多様化する勤労形態へ対応する必要に迫られている

 一方で会社の勤務形態は、短時間勤務や在宅勤務、ワークライフバランス、グローバル分業といった就労形態の多様化への対応がより求められるようになっている。労働力の確保のため「家庭にいる主婦や高齢者を、それぞれのワークライフに合った取り込みが必要になる」(田崎氏)というのは、多くの企業が共通して抱える課題だ。そのため、時間や場所が均質な従来型の勤務形態から、多様なワークスタイルへ。また、連絡や報告、共有から参加者同士の相互作用を目的にしたコレボレーションを進めるため、クラウド、モバイル、ソーシャルの技術や手段をかけ合わせることが不可欠となってくる。

Eメールに費やす時間を「別の目的に」という考え方

 個人も企業も求める生産性の向上。ただオフィスの現場では、社員がメールやメッセージなどのコミュニケーション数の増大と多様化に苦労している。IBMの田崎氏も「1日にメールが300通、それ以外のインスタントメッセージなども含めると500通以上になる。労働時間の3割はメールやメッセージの処理に追われている」と話す。

 そんな情報過多の状態は業務体制も圧迫する。basexとHay Groupの調査によると「従業員の94%が膨大な情報量に圧倒され、対処不可能だと感じたことがある」と答えており、「経営層の44%が、現在のビジネス目標に対し、すでに従業員の限界を超えているのでは……と憂慮している」のだという。McKinseyの調査によると、平均的なビジネスパーソンは労働時間の28%をEメールの処理に費やしている。この状況を変えれば、それに費やしていた時間の何割かを別の目的に利用できる。

photo 日本IBM ソーシャル事業部テクニカルセールスの臼井修氏

 日本IBM ソーシャル事業部テクニカルセールスの臼井修氏は、IBM Verseに求められているのは具体的に次の3点だと話す。

  • 限られた時間にフォーカスする業務は何か見極める確かなセンス
  • 最も重要な人々と容易に開始できるコラボレーション
  • 受信ボックスから自分自身の優先順位を取り戻す

 IBM Verseは、クラウド対応かつモバイルデバイス向けの設計に、アナリティクスと高度な検索の機能を搭載し、利用者に合わせて動作する。これが「あなたを理解するメール(Mail that Understands You.)」とうたう理由だ。シンプルに必要なことのみを表示するよう工夫したユーザーインタフェースと、チームやグループで協業できる手段をセキュアな環境で提供する。


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