「IBM Verse」は、オフィスワーカーの“何”を変えるのか「働き方の革新は、もう“マスト”」それならば?(2/2 ページ)

» 2015年03月18日 17時00分 公開
[ふじいりょうITmedia]
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1つの画面で、自分のタスクや業務の進捗を一元化して把握

 IBM Verseのトップ画面は、上段に「今日中にやる必要のあるアクション(Needs Action Due Today.)」をはじめとするTo Doタスクが並び、その下段に自分にとって重要と“解析”されたメンバーを表示する。そのリコメンドリストから、どの手段で連絡──メール、SNSでのメンション、フォーラムへの投稿、Webチャットなどを選択し、アクションが取れる。最下段にはカレンダーバーも表示され、大枠のスケジュール感もつかめる。来たメールを順に処理していくこれまでの手段に対し、この画面だけで「いま、何をすべきか」「いつまでに、何をすべきか」を把握できる。これまでメールは「読む」「削除する」だけのものだったが、Verseではメールから適切な「アクション」が促され、さらに次のコラボレーションへと切れ目なくつながる。

photo IBM Verseのトップ画面

 メール画面では、上段に当事者メンバー(例えば、To、Fromにあるメンバー)を示し、その右側に自動解析によって重要と判断されたメンバーも並ぶ(例えばCc、同組織の人、当事者とともに以前アクションをとったことがあるメンバー……など)。赤丸で示す新着メッセージへマウスを重ねると、その人のプロフィール情報やSNS、フォーラムのログイン状況も一緒に確認できる。在席しているならば、メールを送って返事を待つよりこのままチャットするほうが話は早そうだ。こんな判断をサッとできる。

photo IBM Verseのメール画面

 自分がやるべきタスク、そしてメンバーにお願いしているタスクの数も示される。同時に最下部のカレンダーバーで予定も一緒に把握できる。会議が必要ならばクリック操作1つで「IBM Connection Cloud」のミーティング予定と連携し、招集メンバーの空き状況を把握した上で会議予約を入れられる。

 また、「人のつながり」も可視化してくれる。業務連絡メールには、Cc欄へ自分の知らない人が含まれていることも多い。たいていは担当者の上司だったり、他のメンバーとつながりがあるパートナーだったりするが、これまでの手段ではあくまで憶測にすぎない。これを確認し、可視化できるという機能だ。その上司や部下は誰か、どの部署のメンバーかといった情報もワンアクションで確認できる。加えて、特定のメンバーから送られたメールには、過去に受信したメールや検索候補にて自動的にフィルタリングされ、並列して一覧表示する。「自分で検索ワードを打たくても、IBM Verseが理解して必要な情報を示す。ここがポイント」(IBMの臼井氏)。

 添付ファイルがあれば、「IBM Docs」で個別ソフトを立ち上げず閲覧や編集もできる。後で作業するなら、「Needs Action」へ入れておけば、仕事のやり忘れも防げる(作業中だよ、もう少し待ってのステータスを共有する)。逆に業務を依頼する立場では、相手へ待っていることを示す「Waiting For」をアラートとして出せる(相手には、自分が待っている=早くして/忘れないでとするステータスを示せる)。ファイルはクラウドに置いてリンクを共有しておけば、自身はいつでもどこでも、相手も進ちょく状況を確認しながら、こんなコミュニケーションも実現できる。

 「ビジネスにおけるさまざまな作業を、ブラウザ上で動くIBM Verseのみで完結できる環境を提供します。これまでのように単純にメールの添付で送ってしまうのではなく、クラウドストレージ上に置くようにすれば、ファイルのシェアだけでなく、メンバー間のコミュニケーションや当事者意識を高めさせるにも有効です」(IBMの臼井氏)。企業内ブログやコミュニティの機能もあり、任意のファイルや情報を共有する社内情報共有基盤の構築も想定できる。もちろんスマホ時代に沿い、PCのブラウザ(SaaS)版と同機能を有するiPhoneなどスマートフォン対応クライアントアプリの提供も予定する。

企業コラボレーションの「セキュリティ管理」をどうするか

photo 日本IBM ソーシャル事業部ブランド戦略担当の赤松宏佳氏

 IBM Verseは、IBM Connection Cloudで提供されるソーシャルネットワークやカレンダー、チャット、Web Meetingなどと密に連携する。Connection Cloudは、企業の業務推進のために設計されたクラウド型のグループウェアサービスとして、ファイルの共有や外部メンバーを含めたコミュニティ機能を設け、IBM Notes/Dominoなど既存のIT環境や組織形態などもに応じて導入できる。

 セミナーでは、日本IBM ソーシャル事業部ブランド戦略担当の赤松宏佳氏によりConnection Cloudをタブレットでスマートに扱うためのデモンストレーションが実施された。IBM Verseからでも、クラウド上のファイルへ直接アクセスでき、よく使うファイルのピン留め設定なども可能。タブレット内のローカルファイルをクラウド上の最新版に自動同期する機能などもある。参加コミュニティの発言内容へ「いいね」するなどの意志表示もスマートデバイスで自然に行える。


photo IBM Verseは、IBM Connection Cloudなど各種基盤やツールと密に連携して役割を果たす

 IBMでは、SNSのタイムラインを「アクティビティストリーム」と読んでいる。“ファイル”をフォローすることで、その制作者をフォローできるようになり、さらに参加しているコミュニティともつながる。ファイルの共有や共同編集といった作業は、個人やごく近くの同部署のメンバーだけでなく、他部署、他事業所、あるいは関連する子会社のメンバーの意見も取り入れながら進行するといった、これまでしにくかった、できなかったメンバーとのコラボレーションも可能になる、しやすくなることに強く期待したい。

photo ファイルをフォローするという考え方を取り入れ、制作者、プロジェクト参加メンバーとつながれるようにした
photo 大容量ファイルの共有やプロジェクトの進ちょく管理といった組織間、企業間をまたぐコラボレーションも自然に図れる

 ただ、業務ツールだけに情報セキュリティへの配慮も同時に強く求められる。ファイルの共有、アクティビティ、コミュニティ、Web会議には社外のゲストメンバーを招けるが、ゲストメンバーは企業のクラウドスペースには入れない仕組みを工夫する。配布するファイルは「非公開」「公開」「共有」いずれかのフラグを立てて管理するほか、万一時に備え社外へダウンロードされたファイルが何かを確認する機能も付いている。

photo 企業間でのコラボレーションにおいては、配布するファイルを「非公開」「公開」「共有」いずれかのフラグを立てて管理する

 IBM Verseは、2015年3月末よりConnection Cloud S1(月額1428円/ユーザーから)と、単体のライセンスで提供される。

 今のところIBM Verse単体のサブスクリプション料金は未定だが、現行のメールサービス「IBM SmarterCloud Notes+Traveler」の月額1000円/ユーザーと同程度になるようだ。また、Connection Cloud S1の現契約企業は追加契約なしにIBM Verseも利用できるようにするほか、「IBM SmarterCloud Notes」の契約企業にもIBM Verseの利用権が提供される予定(「IBM SmarterCloud Notes Entry」は対象外)だ。

photo IBM Verseは、Connection Cloud S1(月額1428円/ユーザーから)とSmarterCloud Notes(予定)利用者、そして単体ライセンスの方法で提供する
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