“受信箱”処理ではもう追いつかない。それを解決するには──。IBMが、コードネーム:IBM Mail Nextとして開発を進めていた新メールソリューション「IBM Verse」を発表。“今まで誰も想像したこともないメール”とうたうが、これまでと何が違うのか。
ソーシャル、モバイル、クラウドの技術が進歩するにつれ、メールやソーシャルなど「コラボレーションツール」に対する個人ユーザーの意識が大きく変わっている。個人ユーザーはこうした期待を、自分の業務にも応用したいと考える。
ただ職場では、旧時代の、Eメールならそれ、コラボレーションツールならこれと、相互に連携していないそれぞれのアプリケーションを使う方法しか提供されていない。膨大な量の情報が毎日押し寄せる現在、増えた情報を処理しきれない「情報過多の状態」に陥る。basexとHay Group調査によると「従業員の94%が膨大な情報量に圧倒され、対処不可能だと感じたことがある」と答え、「経営層の44%が、現在のビジネス目標の達成は、すでに従業員の限界を超えているのではと憂慮」しているという。
企業におけるEメールの活用は、過去30年でビジネスパーソンの生産性において最大の進歩となった。ただ、現在の組織においてやりとりされる電子メールの量と対応に要する時間は日々増しており、業務進行のために連絡を取り合う相手の数も拡大した。Eメール、社内ソーシャル、電話、スマートデバイスを通じたコミュニケーションやコラボレーションツール活用の普及が進むにつれ、取り扱う情報量も急増している。
McKinsey Global Institute調べによると「平均的な従業員は1週間の業務時間のうち、28%をEメールの処理に費やしている」ようで、「平均40%のメールが自分へのアクションを求めている」ため、自身が処理しないと業務が滞る。つまり、現在のツールでは将来のワークプレースに対応できておらず、生産的ではないと感じている。コミュニケーション用にソーシャルコラボレーションツールを導入すれば「それに費やす時間の最大30%を別の目的に利用できる」と考えている。
では、企業はそんな課題をどんな方法で対処すべきか。そんな課題を抱える多くの企業に向けた「働き方を革新させる」1つの回答をIBMが提案する。
日本IBMは11月27日、“Eメールのあり方を根本から考え直す”を主軸に置いた法人向け新メールソリューション「IBM Verse」を発表。2015年第1四半期にSaaS版の出荷をはじめる。
IBM Verseは、情報過多に陥りつつあるビジネスパーソンに対し、電子メールを中心としたワークスタイルの変革と生産性向上の推進を提案する「まったく新しい考え方を取り入れたメールソリューション」(日本IBM 専務執行役員ソフトウェア事業本部長のヴィヴェック・マハジャン氏)だ。
Eメール、会議、予定表といった基本メール機能やスケジュール機能に加え、ファイル共有、インスタントメッセージ、ビデオ通話など、業務の進行で利用するコラボレーション手段を「1つの環境に統合」する包括ソリューションとして販売する。
大きなポイントは「Inbox(受信箱)ではなく、“人”を主眼に置く」とする、これまでのEメールの抜本から異なる考え方を採用したこと。利用者が必要とする処理を「自動的に優先順位付け」する機能を実装し、何に注力すべきか、何が必要か、どのアプリでコンタクトをとるか、どう仲間と共有するかの手段をツールが自動分析し、リコメンドしてくれる。
主な機能に、
を備える。
例えば、利用者が検索する特定の情報を受信メール、ほかのあらゆる種類のコラボレーションの履歴、コンテンツから抽出して示す「ファセット検索機能」を実装。さらにIBMのアナリティクス技術によって、その日の最も重要な業務を自動的に示す「概要ビュー」機能も特長に据える。利用者の傾向や優先事項を経時的に学習していき、そのときに必要な特定のプロジェクトや関係者情報を自動で提供できるようインタフェースも工夫した。
「今まで“誰も想像したことがない”メール。利用者を理解するメール。ソーシャル、モバイル、クラウド、アナリティクスを組み合わせた包括的なアプローチによる新しいソリューションである。情報過多によって、オフィスワーカーは待ち時間にフォーカスする業務は何かを見極めるセンス、最も重要な人と容易にコラボレーションする方法、日々の管理を取り戻す方法が求められている。これこそ、IBM Verseが将来の働き方に不可欠な理由と位置付ける。IBMはビジネスのためのソーシャルかつリアルタイムなメールコラボレーションのリーダーとして、新たなコラボレーション手段を求める企業のニーズにと課題解決に率先して取り組む」(日本IBMのマハジャン氏)
IBM Verseは、2014年1月のIBM Connect 2014にて「IBM Mail Next(開発コードネーム)」としてコンセプトが示されたもの。2015年第1四半期にまずはSaaS版を投入、追ってオンプレミス版も投入する計画とする。
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