死後にPCやデータをどうすればいいか――IT終活のススメ萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/3 ページ)

還暦が近いと出会いの数より別れの数が多くなる。今回は読者の皆さんもいずれ直面するであろう「死後」における自身のPCやデータなど扱いについて解説したい。

» 2015年03月27日 08時00分 公開
[萩原栄幸ITmedia]

 数年前に筆者の友人が亡くなった。とても優秀で地道にネットワーク系技術者として活動してきた人間だ。家族はお金の管理などを全て彼に委ねていたらしい。ほぼ急死だった。葬式後に奥さんから相談をいただいた。通帳や口座振替については奥さんも知っていたが、その他のことはPCやスマホでネット取引をしていたらしく、全く分からないという。

 そこで奥さんの立ち合いのもと、筆者は彼のPCを立ち上げ、新聞サイトの有料会員登録やアマゾンの商品予約などを取り消した。また、メールで彼の死亡報告と連絡先メールアドレスや奥さんの携帯番号を通知する作業に2日間も費やした。

 また、おそらく男性なら多くの方が収集している性的な画像や、仕事の資料データなどについては慎重に対応する必要があった。奥さんに内緒だったという「株取引」なども停止させなくてはならず大変である(多少の黒字だったので奥さんも特に責めなかったが)。銀行口座などは、たとえ奥さんでも現金を引き出すには制約を伴う。正式に死亡が判断され、法定相続人の全員の合意が必要であり、様々な手続きをしないといけない。自分の死後については、ヒミツの画像の消去や知人への連絡などが気になるだろうが、その他に個別対応すべきものが多々ある。

 こうした作業は、ITに詳しい人がやっても故人の全容を把握するだけで1週間以上かかるに違いない。できれば自動的に対応できる準備が必要になるだろう。筆者は、死後についてのことを生前に準備しておく「終活」のカウンセリングをボランティアでもしており、この「死後のPC処理」についてたいへん興味があった。今回はそのことについて解説したい。

死後に備えてまずやること

 成人を過ぎたら年に一度は「エンディングノート(終活ノート)」を書いておくべきと、若者も含めて提案している。棺桶の中に何を入れるとか、どんな花がいいとかいうことよりも、残された家族にとって最も重要かつ故人も恥ずかしい思いをしなくて済む内容についてだ。財産分与などはもちろん、PC編としてOSのIDとパスワード、PCで処理している金銭関係の取引情報(社名やサービス、ID、パスワード、解約や停止の仕方など)がある。

 そして、自分がしたためたエンディングノートの存在を家族全員に伝えておく必要がある。そうしないと、死後に「勝手に作成された」と法定相続人や家族から騒ぎだす場合があるためだ。本来なら公正証書や遺言信託などにするのがいいが、まだまだ一般的ではないかもしれない。

 エンディングノートには、自分が死亡時に動かしてほしいアプリがあれば、その実行方法を記す。実行した後にどうしておくべきか(また使うのか、一度だけかなど)も伝えおき、再び起動する必要がないなら、データの完全削除(HDDを物理的に破壊するなども)をする方法も明記する。

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