Microsoftの開発者向けイベントではWindows 10に、iOSやAndroidアプリをも取り込んでいく具体的な戦略が示された。Microsoftの“切り札”とはどんなものだろうか――。
米国サンフランシスコで開催された開発者向けのカンファレンス「Build 2015」を皮切りに、シカゴで開催されたITプロフェッショナル向けのカンファレンス「Ignite」まで月下旬から怒濤(どとう)の“Microsoft Week”が続いた。Build 2015ではWindows 10のアプリケーションを大幅に増やすための仕組みが発表された。そこで今回は、Microsoftの切り札ともいえるこの仕掛けを解説していく。
2012年10月にWindows 8が発表されて2年半が経つが、新しいアプリケーションフレームワーク(Modern アプリ)ベースのアプリはほとんど増えていない。Modern アプリは、Windows 8/8.1のModern UI上で動作するため、今までのデスクトップアプリケーション(Win32)とは全く開発手法が異なり、開発者もノウハウを蓄積するのに時間がかかっている。
さらに、Modern UIがあまりユーザーに受け入れられていないのも大きな理由だ。Windows XPからの移行にWindows 8/8.1ではなく、Windows 7を選択する企業も多かった。Microsoftもこのような状況をみて、Windows 10ではデスクトップのウィンドウでModern アプリが動作するようなユーザーインタフェース(UI)を採用している。
しかし、このような小手先の変更ではWin32アプリケーションからModern アプリへの移行は起こりにくい。MicrosoftにとってはModern アプリが増えないと、スマートフォンやタブレットなどのカテゴリーで先行するApple(iOS)やGoogle(Android)に追いつけない。このままではWindows OSはPCだけのモノになり、IT業界におけるMicrosoftの影響力が小さくなって将来的に同社自体の存亡の危機につながりかねない。
そこで同社が打ち出したのは、Windows 10をIoT(モノのインターネット)、Xbox、モバイル、タブレット、PCで共通化させ、どのデバイスでもアプリが動作するようにしようという“One Windows”というコンセプトだ。Windows 10上で開発されたアプリ(Universal Windows Platform App。以下UWPA)は、画面サイズの異なるデバイスでもきちんと動作するようになる。そのためUWPAには「Adaptive UX」という仕組みが組み込まれている(UWPAは以前まで「Universal Windows App」と呼ばれていたものだ)。
例えば、あるアプリをPCで動かすとUWPAが画面サイズをチェックし、PCなど大画面であれば自動的にアプリの画面サイズを大きくする。一方、画面サイズの小さなモバイルの場合はメイン機能の画面だけを表示し、他の画面はボタンで切り替え表示ができるようにしてくれる。
このようにUWPAに従ったアプリであれば、OS側が自動的にアプリの画面サイズを最適化する。Windows 10ではUWPAを実現するために、Windows 8/8.1時代にModern アプリやModern UIを構成していたフレームワークのWindows Runtime(WinRT)をさらに拡張して、Universal Windows Platform(UWP)へ進化させた。
WinRTでは開発者がアプリを複数のデバイスに対応させるために、開発者自身で様々なプログラムを記述する必要があった。UWPではこういった部分を全てOS側で対応させるため、開発者はデバイスの違いを意識せずにアプリを開発できるようになる。
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