大量の紙資料をスキャンする場合、機器の占有時間はなるべく減らしたいもの。読取設定を変更するなどスキャン品質を下げることなく、また機材も買い替えないという条件のもと、なるべく高速にスキャンを行うためのワザを集めてみた。
保管コストの削減はもとより、劣化の防止や検索性の向上、再利用の促進などさまざまな利点が認められ、徐々に広がりつつある紙の文書や帳票のデジタルデータ化ですが、用途や目的を考慮せずにむやみにスキャンすることでかえって効率が悪くなったり、作業に手戻りを発生させてしまうことも少なくありません。
また商法や税法で保管が義務付けられている文書の場合、電子帳簿保存法やe-文書法などのルールに則った手順を踏む必要があり、自分の判断でやみくもにデータ化するわけにいかないといった事情もあります。
本連載ではこうした現在の状況を踏まえつつ、文書のデータ化にまつわる情報、さらにはフォーマットであるPDFや変換機器であるスキャナ、保存先となるストレージに至るまで、業務現場と情報システム部門に役立つ知識やTips、活用術を幅広く紹介していきます(著者より)
大量の紙原稿をデータ化する場合、スキャンにかかる時間をどれだけ減らせるかが、運用上の1つのポイントになる。「複数のメンバーで1台のスキャナを共有している場合になかなか順番が回ってこない」といった問題もあれば、複合機のスキャン機能を使ってデータ化を行っている場合に起こりがちな、「コピーやFAX機能を使いたいユーザを待たせてしまう」という問題もある。1つひとつは小さな問題でも、積み重なるとほかの業務に悪影響を及ぼすことすらある。
とはいえ、解像度を下げるなど、スキャンの品質そのものを下げるのはNGだし、高速スキャンができる製品に買い替えるという選択肢も、現実的には考えにくい。今回はこうした制約がある中で、なるべく高速にスキャンするためのTipsをまとめてみた。
スキャナに原稿を通す際は、なるべく幅をいっぱいに使い、辺が短くなるようセットするのが基本だ。例えば、名刺を読み取る場合、タテにセットするのではなく、ヨコにセットしたほうが、オートシートフィーダ(ADF)の通過にかかる時間を減らせる。
その上で読み取り後にユーティリティ側で90度回転させたほうが、効率的というわけだ。ほんのちょっとした差のように感じるが、まとまった枚数をスキャンする場合、これだけでも作業時間にかなりの差がつく。
読み取った原稿をOCR処理してテキストデータ化する工程は、一般的にスキャンのプロセスの1つとして認識されているが、実際には所要時間の過半数を占めていることも珍しくない。
製品によってはスキャンと同時に行うのではなく、スキャンを終えたあと、PCがアイドルしている時間を用いてOCR処理を行える製品もあり、この場合はスキャナが開放されるまでの時間を劇的に短くできる。スキャンしたデータをすぐに加工したり配布するのではなく、保存することが目的なら試してみたい方法だ。
スキャン作業にかかる時間のうち、案外、無視できないのが、スキャンが終わってから次の原稿をセットするまでの空き時間だ。
特にいったんスキャナから離れて別の作業をする場合、スキャンが終わったことに気づかずそのまま放置していると、ほかの人が作業できなくなり、実質的に機器を占有した状態になってしまう。
最近のスキャナでは、決められたページ数ごとに複数のPDFに自動分割したり、また途中に挿入された区切りページごとに別ファイルに分割保存してくれる製品があり、これらの機能を使えば原稿をまとめてセットでき、原稿の交換にまつわる時間やスキャン終了後の空き時間を削減できる。
一般的に、保存先のドライブがネットワークフォルダだと、ローカルフォルダへの保存に比べて書き込みにかかる時間が長くなる。まずはローカルフォルダに保存し、あとから分類しつつ移動させるほうが、機器の占有時間を短縮できる。また、やむを得ずネットワークフォルダに保存する場合でも、ほかにデータの読み書きをしていないドライブを保存先に指定したほうが、一般的に保存にかかる時間は短くなる。
ストレージの設定と同じく、保存にまつわる所要時間に大きく関連するのが、データを転送する回線の種類だ。スキャンそのものが終了しているにもかかわらず、データ転送が遅いために処理待ちの時間が延びてしまうのはよくある話。とくに顕著なのが無線で接続している場合で、有線に比べて何倍もの時間がかかってしまう。
ネットワークで接続する場合は無線よりも有線(かつ100BASEよりはギガビット対応)、USBであればUSB 2.0よりもUS B 3.0を使うことで、転送にかかる時間は短縮できるので、利用中のスキャナがこうした高速転送規格をサポートしていないか、いま一度、確認することをおすすめする。
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