紙の書類をデジタルデータ化するのにもっとも手軽なのは、スマホのカメラで撮影する方法だ。こうしたスマホ向けのスキャナアプリのうち、今回はiPhone用アプリ「Scanbot Pro」を紹介する。
保管コストの削減はもとより、劣化の防止や検索性の向上、再利用の促進などさまざまな利点が認められ、徐々に広がりつつある紙の文書や帳票のデジタルデータ化ですが、用途や目的を考慮せずにむやみにスキャンすることでかえって効率が悪くなったり、作業に手戻りを発生させてしまうことも少なくありません。
また商法や税法で保管が義務付けられている文書の場合、電子帳簿保存法やe-文書法などのルールにのっとった手順を踏む必要があり、自分の判断でやみくもにデータ化するわけにいかないといった事情もあります。
本連載ではこうした現在の状況を踏まえつつ、文書のデータ化にまつわる情報、さらにはフォーマットであるPDFや変換機器であるスキャナ、保存先となるストレージに至るまで、業務現場と情報システム部門に役立つ知識やTips、活用術を幅広く紹介していきます(著者より)
「Scanbot Pro」は、doo GmbHが提供するiOS用のスキャンアプリ。価格は600円(アプリ内課金)で、試用時のバージョンは4.0.1。海外のアプリだがインタフェースは日本語化されている。
本アプリの特徴は自動化されたインタフェースだ。書類の形状を認識すると自動的にシャッターを切る自動撮影に対応するほか、形状補正と色調補正も自動で行われるので、多数の書類もスピーディーに取り込める。自動補正の結果に納得がいかなければ手動で調節することも可能だ。
また、保存を実行するタイミングで、OCR処理も自動で行われる。同種のアプリではOCR処理したテキストデータをPDFに埋め込めず、別ファイルとして出力するしかないことも多々あるが、本アプリではきちんとPDFに埋め込むことができ、さらにそのテキストデータをポップアップで表示することもできる。わざわざテキストファイルにコピー&ペーストしなくてはいけないアプリと違い、簡単に確認できるのはありがたい。
スキャンした書類をクラウドにアップロードする機能も強力だ。DropboxやGoogleドライブなどのメジャーなサービスのほか、国内ではほとんど名が知られていないサービスまで、選択肢の多さは同種アプリの中でも際立っている。これらは手動アップロードのほか、自動アップロードにも対応している。もちろんメールに添付しての送信や、iCloud Driveへの保存も可能だ。
他のアプリであまり見かけないのが、ファイル名のフォーマットを自由に変更できる機能だ。デフォルトの「Scanbot+日付+時間」のほか、さまざまな書式をワンタップで設定できる。日付のフォーマットや順序、区切り文字の種類を変えられるのはもちろん、現在地やカレンダーの情報を取り込んでファイル名に使うこともできるので、書類を取り込んだ場所をファイル名として記録することも容易だ。
色調補正で明るさとコントラストの手動調節ができないこと、またOCRの精度が他のアプリと同様、A4サイズでは実用レベルにないのはマイナスだが、ここまで紹介した機能のほかにもPDFにハイライトや注釈を追加する機能や、QRコードを読み取る機能なども備えており、機能の多さと完成度の高さは突出している。せっかく有料アプリを購入するのであれば少しでも高機能なアプリを手に入れたいというユーザーにおすすめしたい。
項目 | 機能 |
---|---|
自動スキャン | ○ |
台形補正(自動) | ○ |
台形補正(手動) | ○ |
曲面補正 | × |
明るさ・コントラスト調整 | × |
カラーモード変更 | ○ |
文字のテキスト化 | ○ |
形式 | |
クラウドサービスへのアップロード | ○ |
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