紙の書類をデジタルデータに変換する方法としてもっとも手軽なのは、スマホのカメラ機能を使っての撮影だ。今回はAndroid用アプリ「PDF Scanner PRO」を紹介する。
保管コストの削減はもとより、劣化の防止や検索性の向上、再利用の促進などさまざまな利点が認められ、徐々に広がりつつある紙の文書や帳票のデジタルデータ化ですが、用途や目的を考慮せずにむやみにスキャンすることでかえって効率が悪くなったり、作業に手戻りを発生させてしまうことも少なくありません。
また商法や税法で保管が義務付けられている文書の場合、電子帳簿保存法やe-文書法などのルールに則った手順を踏む必要があり、自分の判断でやみくもにデータ化するわけにいかないといった事情もあります。
本連載ではこうした現在の状況を踏まえつつ、文書のデータ化にまつわる情報、さらにはフォーマットであるPDFや変換機器であるスキャナ、保存先となるストレージに至るまで、業務現場と情報システム部門に役立つ知識やTips、活用術を幅広く紹介していきます(著者より)
「PDF Scanner PRO」は、GRYMALAが提供するAndroid用のスキャンアプリ。価格は589円で、試用時のバージョンは1.1.28。海外のアプリだがインタフェースは日本語化されている。
書類の自動スキャンモードが用意されており、輪郭の検出および台形補正、露出の補正までをオートで行えるほか、手動での調整にも対応する。バッチ処理にも対応しているので、書類を連続撮影し、複数ページのPDFにすばやくまとめることが可能だ。PDFにパスワードを付与する機能や、余白を追加する機能も用意されている。
本アプリの特徴は、PDFへの署名ツールを備えていることだ。フリーハンドの署名のほか、画像をスタンプとして貼り付けたり、マーカーで線を引いたり、テキストを入力することもできる。ただし、いずれもレイヤーとして追加されるのではなく、元画像に直接書き込まれてしまうので、実用性は高くはない。一方、消しゴムツールは、元画像の不要な箇所をダイレクトに消せるため、パンチ穴やステープラの跡を消去するなどの用途で重宝する。
50言語のOCRに対応するのも特徴だ。アプリ上で処理を実行するため、オフライン環境でも利用できるほか、処理中に文字認識した箇所が次々と反転していくので、きちんと認識されたかどうかを把握しやすい。ただし、日本語と英語の混在環境には対応しておらず、認識率については名刺サイズだと相応に高いものの、A4サイズになるとお世辞にも高いとはいえないレベルだった。また、OCRで得られたテキストをPDFに埋め込むことはできず、別途テキストとしてメールなどに貼り付けて書き出す形になるのも注意したい。
操作は1つの流れになっておらず、途中で枝分かれしたり戻ったりと、慣れるまでに多少時間はかかる。しかし、機能そのものは豊富なため、慣れればスピーディに処理が行えるようになる。589円の有料アプリだが、広告ありの無料版「PDFスキャナ 完全無料 + OCR」でも有料版と同じ機能が使えるので、まずはこちらを試してみるのがよいだろう。
項目 | 機能 |
---|---|
自動スキャン | ○ |
台形補正(自動) | ○ |
台形補正(手動) | ○ |
曲面補正 | × |
明るさ・コントラスト調整 | ○ |
カラーモード変更 | ○ |
文字のテキスト化 | △ |
形式 | PDF/JPG |
クラウドサービスへのアップロード | ○(外部アプリ利用) |
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