NASの買い替えでもっとも労力がかかるのはデータの移行だ。その点、ドライブの差し替えによる移行をサポートしている製品は、データのコピーなどを行う必要もなく、環境設定も含めて新しいNASへとすばやく移行できる。SynologyのNASを例に、ドライブの差し替えによる移行を試した。
保管コストの削減はもとより、劣化の防止や検索性の向上、再利用の促進などさまざまな利点が認められ、徐々に広がりつつある紙の文書や帳票のデジタルデータ化ですが、用途や目的を考慮せずにむやみにスキャンすることでかえって効率が悪くなったり、作業に手戻りを発生させてしまうことも少なくありません。
また商法や税法で保管が義務付けられている文書の場合、電子帳簿保存法やe-文書法などのルールに則った手順を踏む必要があり、自分の判断でやみくもにデータ化するわけにいかないといった事情もあります。
本連載ではこうした現在の状況を踏まえつつ、文書のデータ化にまつわる情報、さらにはフォーマットであるPDFや変換機器であるスキャナ、保存先となるストレージに至るまで、業務現場と情報システム部門に役立つ知識やTips、活用術を幅広く紹介していきます(著者より)
NASの買い替えで最も労力がかかるのが、データの移行だ。たいていの買い替えは容量不足をきっかけとして行われるため、これまで使っていたNASに保存していた何百Gバイト、あるいは何テラバイトという大量のデータを、新しいNASへと移動する必要がある。
データの移動方法は、NASのメーカーや機種によって大きく異なるが、最もシンプルなのが、HDDを物理的に差し替える方法だ。従来のNASからHDDを抜き、新しいNASに差し込んでやるわけである。
ユーザが自前でHDDを組み込むタイプのNAS、すなわちQNAPやSynology、ASUSTORの製品は多くがこの方式をサポートしており、数テラバイト単位のデータも物理的に差し替えるだけで移行が完了する。
この方法では、移行前と移行後のNASのドライブ数が同一(例えば2ドライブ→2ドライブ、4ドライブ→4ドライブ)か、もしくは移行後のドライブ数が移行前よりも多い(例えば2ドライブ→4ドライブ、4ドライブ→6ドライブ)ことが必須条件になる。今回はSynologyのNASを例に、引越の手順を紹介しよう。
今回は、SynologyのNAS「DS415play」から「DS715」への移行を行ってみよう。もっとも、DS415playは4ドライブ、DS715は2ドライブということで、このままではドライブを差し込むスロット数が不足している。もともとDS415playを2ドライブで運用していたのなら別だが、物理的にスロット数が足りなければ、すべてのドライブを差し替えられないため、移行ができないのは明白だ。
実はこのDS715は、専用の拡張ユニットをSATAで接続することで、ドライブの数を増やせるというユニークな機能がある。例えば5ドライブの拡張ユニット「DX513」を組み合わせれば、もとの2ドライブに5ドライブを足して、計7ドライブのNASとして使えるわけだ。これなら、4ドライブのNASからの移行も問題なく行える。
手順は簡単で、カートリッジとなっているドライブを移行元のNASから抜き、そのまま新しいNASに差し込むだけ。「ドライブはこれまでと同じ順序で装着する」というルールさえ守れば、とくに難しい点はなく、電源を再投入すれば移行先でも同じRAID構成が復元される。ユーザ名などの設定情報もそのまま維持されるので、手動で再設定を行う必要もない。
もっとも、大事な業務データを収めたNASということで、万一のトラブルに備えてメーカーサイトにある移行手順に従って、データおよび設定のバックアップを取ってから作業に臨んだほうがよいが、これはあくまでも保険である。特にデータに関しては、ふだんからUSBドライブに定期的にバックアップを取っているなら、それをそのまま使えばいい。
今回は異なる型番のNASへと移行したが、配線を含めて2時間ちょっとですべての移行作業が完了した。ドライブ差し替え時の掃除や本稿用の写真撮影も含めての時間なので、それらを省けば所要時間は1時間を切る程度まで短縮できるだろう。
新旧のNASを並べて数テラバイトのデータをコピーする方法だと一昼夜かかってもおかしくない上、環境を再設定するのに多大な労力を必要とするので、そのスピーディーさは際立っている。
国内メーカーのNASは当初からHDDが装着された状態で販売されており、ドライブの内部にシステムソフトウェアがインストールされていることから、そのまま抜いてほかのNASに装着してもうまく認識しない。その点、今回紹介したSynologyをはじめ、ドライブが別売のメーカーのNASは、ドライブの差し替えによる機種移行をサポートしていることが多いので、これからNASを新たに導入するのであれば、将来の移行を視野に入れた上で、最初からこうした製品を選ぶのも賢い選択だろう。
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