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» 2015年07月10日 08時30分 公開

萩原栄幸の情報セキュリティ相談室:新幹線での焼身自殺をセキュリティ視点で考察すると…… (2/3)

[萩原栄幸,ITmedia]

二度と起きないための方法は?

 個人的な見方では新幹線と他国の高速鉄道の最も大きな違いが「運用」だと思う。新幹線はピーク時に約3分間隔で走行する。銀行員時代に本店の上層階から東京駅を一望できた。新幹線が頻繁に出入りするのを見て、「なんてすばらしい運用をしているのだ」と感じていた。

 今回の出来事から、テロ対策として航空機並みの手荷物検査を新幹線でもやるべきだとの意見が聞かれる。しかし、大勢の客を乗せて高密度な間隔で輸送する運用体制では絶対に無理だ。航空機テロでも新幹線テロでも、監視カメラの増設などある程度は監視を強化しつつ、車内の緊急連絡におけるハード、ソフト、運用体制の見直しや、難燃性材料の強度対策、不燃性材料の採用など、小規模な対策が今後も検討され、実現されていくだろう。

 ただし、今回のような「自身を犠牲にすることで何でもできてしまえる」というリスクはなくせない。これが現実だ。車内で最も燃えやすいものは人間の衣服であり、職員の制服を難燃性にしても、乗客に難燃性の生地を使った衣服の着用を強制させる訳にはいかない。

 様々なケースを想定した対応策が用意されていると思われるが、全てを防御する対策はなかなか難しい。攻撃側は1つでも脆弱なところがあれば、そこ見つけてピンポイントで攻撃すればいい。標的型メール攻撃と全く同じ理屈である。「100%防御」は不可能であり、だれもがそのことを理解しないといけない。サイバー攻撃のような対策でもそうだが、事が起きれば速やかに発見して、最小限の被害に留める対策を考えるべきである。

政府やJRが最も強化すべきものは?

 これは費用対効果の視点で「小さな努力の積み重ね」を実践する。とそれと同時に、鳥瞰できる立場の人間が防御システムをシミュレーションパターンごとに検討し、状況に応じた防御方法を見直すことに尽きると思われる。

 アイデア次第で大きな効果を期待できる方法が多々ある。たくさんの警備員を配置して監視することは、人件費から難しいだろうが、車内の監視カメラをきめ細かく設置して監視の目を漏れなくすることならできるだろう。最近では車内販売を廃止する列車も多いが、どうしても通路をふさいでしまう車内販売を減らして、いつでも避難できるようにするとか、車掌に年数回のセキュリティ教育を義務付けるとか、改善できることはたくさんあるだろう。その積み重ねが信頼につながっていくのではないだろうか。

JR東海は車内監視カメラの増設を発表した(報道資料より)

東京オリンピックでの対策は?

 具体的な計画は不明だが、期間中だけゴミ箱を撤去するとか、小手先の対策は控えるべきだろう。テロリストは自分の命を賭けて事に臨む。そんな小手先の対策は防御の1つにはなっても、中規模以上の事案に対してはほとんど意味がない。

 例えば、ニューヨークの地下鉄は二重構造のゴミ箱にして被害を最小限にさせる(中のゴミ箱で爆発しても外のゴミ箱で抑える)とか、多数の死者がでないように毒ガスを封じ込めるといった方法も必要になるのではないか。

 世界に衝撃を与えたいというテロリストにすれば、オリンピックのような国際的なイベントは格好のタイミングであり、自分の命を賭けて凄惨な事態を引き起し、英雄になりたがる。防御するには、こういう人間の行動や心理を入念に分析して徹底した対策を講じるとともに、そこまでのリスクにないものにはコストパフォーマンスの良い対策を講じる。うまく組み合わせていくことが重要になる。

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