Internet Explorerのサポート終了でレガシーの呪縛を断ち切れるか?Computer Weekly

Microsoftは、IE8、IE9、IE10のサポートを終了する。ブラウザベースのアプリケーションを多く抱える企業は、社内アプリケーションの見直しが急務だ。

» 2015年10月21日 10時00分 公開
[Cliff SaranComputer Weekly]
Computer Weekly

 多くの企業のIT部門は今、大混乱に陥っている。米Microsoftが「Internet Explorer(IE)」の旧バージョンのサポートを終了させるからだ。

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 2016年1月16日、MicrosoftはIE8、IE9、IE10のサポート、つまりセキュリティパッチの無償提供を終了する。「Windows 7」以降を使用している場合、ブラウザベースアプリケーションの動作環境として使えるのはIE11だけになる(訳注)。

訳注:「Windows 8」はIE11をインストールできないので、「Windows 8.1」か「Windows 10」にアップグレードする必要がある。

 2014年、Microsoftは旧バージョンのIEでしか動作しないアプリケーションをIE11でも使えるようにする「エンタープライズモード」を導入した。2015年7月、同社はこのサポートを拡大し、名称を「IE7 エンタープライズモード」に改めた。

 しかし、こんなブラウザ設定の変更は、レガシーWebアプリケーションをIE11で動作させるのに必要な問題回避策のほんの一部でしかない。IT部門が自ら調査して、互換性のないアプリケーションを特定しなければならない。

 IT部門が現在直面している状況は、Microsoftが「Windows XP」のサポートを終了したときのそれによく似ている。企業を含めた大規模組織は、新バージョンに移行するか、あるいはMicrosoftにカスタムサポートを依頼するか、いずれにしても多額のコスト負担を迫られることになった。仮にカスタムサポート契約を結んだとしても、正式サポートの終了後は費用が倍増することになる。従ってIT部門は、別環境に切り替えるか、Microsoftに高額な料金を払うかを選択しなければならない。

Webアプリはなぜ新ブラウザでは動かないのか

 IT部門は、ブラウザベースのアプリケーションを全て最新のIEで動作するようにしておかなければならない。

 ブラウザ管理ソリューションを提供している新興企業、米Browsiumの代表を務めるゲイリー・シェア氏に、レガシーなブラウザ上でしか動作しない社内アプリケーションをサポートするために、企業のIT部門はなぜいつも問題に直面しているように見えるのかと尋ねたところ、同氏はこう答えた。「要するに技術の進歩だ。プログラミング言語は進化を遂げ、ブラウザは最適化され、昔の発想や流儀は限界に達したということだ」

 限界に達した昔の発想や流儀に対処するため、ブラウザはそろそろ過去と決別する時が来ていると、同氏は主張する。そうしないとコードベースが(一般ユーザーの)支持を失い、全てを動作させるために重ねてきた改良が無駄になってしまうという。「企業内アプリケーションは、常にブラウザのバージョンアップの影響を受けてきた。その影響度はコンシューマー向けのWebサイトよりも大きい。社内アプリケーションの開発者は、作業に当たって『あらゆるユーザーをサポートしなければ』という発想は持たないからだ。アプリケーション開発者は、開発を開始した時点で使用しているブラウザのバージョンを使い続けることを前提として作業を進める。そして通常、ブラウザが将来進化したときに(自分たちが開発したWebアプリケーションが)どうなるかは考えない」

 そこでシェア氏は、レガシーなブラウザアプリケーションをサポートしなければならない組織の支援サービスに特化した会社を立ち上げた。ブラウザ問題の影響範囲について、同氏はこう話す。「社内用Webアプリケーションが順調に稼働しているときに、われわれに連絡してくる顧客はいない。この問題は広範囲で発生している。ほとんどの企業にとって、自力でWebアプリケーションに手を加えることは無理な相談だから」

互換性のない箇所を特定することの困難さ

 同氏は続けて、社内で稼働しているWebアプリケーションの全てを把握していないIT部門は多いと指摘する。シェア氏の説明によると、今は実務部門の担当者が自力で部門サーバを構築したりSaaSのライセンスを購入したりすることが可能になった。そのため、どんな(ブラウザベース)アプリケーションを各部門が展開しているのか、IT部門からは見えにくくなっているという。「自動化したテストを実行するわけではないし、テストスクリプトすら作成していない場合も珍しくない。だからブラウザにささいな変更が加えられただけでも、アプリケーションの重要な部分が動作しなくなり、その企業の基幹業務のワークフローが崩れてしまうこともある」

 一方シェア氏が率いるBrowsiumは、事業方針の転換を図っているという。かつてはブラウザの移行に伴って発生するWebアプリケーションの修正を支援するツールの提供が主力事業だったが、稼働中のブラウザ管理に軸足を移しつつある。1990年代前半に登場した最初のブラウザである「Mosaic」の共同開発者の1人、マーク・アンドリーセンが将来を予測して語った言葉を引用しつつ、ゆくゆくはブラウザが、現在のOSのような役目を果たすとシェア氏は自説を披露した。

 米HPは最近、Browsiumを使ったブラウザの移行サービスを開始して、社内システムをIE11に移行させる企業を支援している。同社の「WebApp Accelerator Service for Internet Explorer 11」(以下「WebApp Accelerator Service」)はソフトウェアとサービスを組み合わせたもので、企業の実務部門がWebアプリケーションの互換性問題を解決する、費用効率の高い方法を提供するものだと同社は説明する。組織の基幹業務用Webアプリケーションを、最新のOSとブラウザでも従来通り稼働させる実装および移行サービスを提供するというのがHPの主張だ。

 「OSとブラウザの新バージョンがリリースされるたびに、Webアプリケーションの互換性問題を克服するためのハードルが上がり、費用もかさんでいく」と話すのは、HP Technology Services Consultingのネットワークおよびモビリティ担当副社長、サイモン・ヒューズ氏だ。「Browsiumのブラウザ管理ソフトウェアと当社のWebApp Accelerator Serviceを組み合わせると、費用効率が高くて包括的なソリューションを提供できる。個々の顧客ニーズを満たすような設計ができるからだ」

ブラウザ管理への移行

 実業界でWindows XPが長期にわたって使い続けられたのは、ブラウザベースの組織内アプリケーションの多くが、IE6ベースだったからだ。

 「われわれが見てきたアプリケーションの多くは、購入、カスタマイズ、展開に数百万ドル投資したERPまたはCRMシステムだ。こうしたシステムをアップグレードするとなると、さらに数百万ドルが必要だ」と前述のBrowsiumのシェア氏は付け加える。

 この費用をどうするか、結論を出すまで時間がかかることが多いという点も、企業がレガシーアプリケーションの稼働を継続している理由の1つとなっている。そしてブラウザのアップグレードを(議論の結果)実行したとしても、重要な機能が動かなくなる場合がままあると、シェア氏は報告する。今はほとんどの基幹業務がブラウザベースのアプリケーションで実行されるので、Webアプリケーションに(前方)互換性がないと、業務の生産性に与えるマイナスの影響が大きくなり、OSやブラウザのアップグレードの順調な進行を妨げる障壁となる。「2015年はWindows 10へのアップグレードサイクルが始まったことに加えて、Windows 7を使い続けるなら2016年1月までにIE11へ移行しなければならないというプレッシャーもある。完璧なブラウザ管理を実行することが急務となっている」とシェア氏は締めくくった。

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