7つの課題に悩む“ガリガリ君の赤城乳業”を救ったクラウド(前編)(2/2 ページ)

» 2015年11月30日 07時30分 公開
[後藤祥子ITmedia]
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“誰が何をどう使うか”を徹底的に精査

 「自分たちが望むシステムとはどんなものなのか」――。真に使えるシステムを導入したいと考えた赤城乳業では、部門ごとにヒアリングを行い、要件を細かく整理したという。

 まずはメールやワークフロー、ポータルなど46の切り口で項目をまとめ、その下に細かい要件をひも付けていくことでニーズを洗い出し、次に「46の機能を、誰がどう使うか」を精査した。

Photo 自分たちの業務に必要な機能を洗い出し、どの部門の誰がどう使うかを精査した

 「工場の人たちはスケジュール管理は必要なく、稟議(りんぎ)やファイル管理もほぼない――というように、どの部署でどの機能を使うかをまとめました。合わせて“ポータルで何を見るのか”“モバイルだと何を見たいのか”についても整理しています」(吉橋氏)

 ここでまとめた内容を提案依頼書に盛り込むことで、SIベンダーからより自社の業務にマッチしたシステムを提案してもらえるよう工夫したという。

提案依頼書にも“ひと工夫”で、選定がスムーズに

 吉橋氏によれば、費用見積シートにも“ひと工夫”を加えることで、選定をよりスムーズにできるという。

 「SIerの見積は、それぞれのベンダーの書式で作成されます。そのため、事前に何も言わないと、私たちが“横並びで比較したい軸”とずれた内容になってしまいます。そうすると全体像を見た上での比較ができなくなってしまうので、私たちのほうから項目を用意して、“この切り口で見積書を出してください”とオーダーしました」(吉橋氏)

 製品の選定にあたってはまず、SIerから提案された商材を情報システム部が“プレゼン自体と将来性”の2軸で評価。次に、役職も部署も異なるユーザー部門の8人が評価に臨んだ。

 ユーザー部門の意見を聞く際のプレゼンで重視したのが「分かりやすさ」。機能本位のプレゼンでは評価者が混乱し、正しい評価ができなくなる恐れがあることから、“ユーザーがイメージしやすい、1日の業務に合わせたデモ”をSIerにオファーした。

 「朝、会社に来てポータルサイトを確認し、メールとスケジュールをチェック。ワークフローを処理して外出し、異動先からモバイル経由で情報をチェックする――といったように、仮想体験しているようなイメージのデモでユーザー部門に評価してもらったのです」(同)

Photo 業務現場のスタッフがイメージしやすいよう、プレゼンを工夫してもらった

 その結果、最終候補として残ったのが、オンプレミスのバージョンアップ版Notesとクラウド型のOffice 365だった。

従来のシステムを捨て、クラウド型のOffice 365を選んだ理由

 吉橋氏によれば、コスト面、機能面のいずれもOffice 365が優位だったが、ワークフローとセキュリティで課題が残ったこと、ユーザーインタフェースが大きく変わることがデメリットだったという。しかし、解決のめどが立ったことからOffice 365の導入が決まった。

 「UIの変更に関わる問題は、シンプルで分かりやすいポータルを設計することと、きめ細かいユーザートレーニングを実施することで対応し、ワークフローとセキュリティの課題はサードパーティー製品の導入で解決できることが分かりました。これでデメリットが解消し、うちの会社でもいける――ということになりました」(同)

 ただ、最後に背中を押したのは、やはり“将来性”だったと吉橋氏は振り返る。

 「Notesは入れたその時点でシステム構築の進化が止まってしまいますが、Office 365は常に進歩しています。10年後を考えたときのメリットが大きいことからOffice 365に決めました」(同)


 後編では、Office 365の導入効果と今後の拡大活用について紹介する。

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