ガリガリ君の赤城乳業、クラウドでスピード経営へ 老舗の挑戦(後編)(1/2 ページ)

われわれは小さい会社だから、全社でスピード経営を目指している――。そんな思いからグループウェアのクラウド化に踏み切った老舗アイスメーカーの赤城乳業。導入後の効果はいかに。

» 2015年12月25日 07時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]

 オンプレミスからクラウドへ――。業務現場のニーズを部門ごとに精査し、さまざまな検討を重ねた上で、クラウド型グループウェア「Office 365」の導入に踏み切った赤城乳業。前編に続いて後編では、導入の効果とスムーズな移行に向けた取り組みを見ていく。

Photo 赤城乳業が抱えていた課題。この課題の解決を目指してクラウド型グループウェア「Office 365」の導入に踏み切った

全社ポータルで“攻めのIT”を支援

 スピード経営を目指す赤城乳業が、Office 365の移行後に社員の生産性をより高めるために取り組んだのが、全社で情報を共有できるポータルの構築だ。

 このSharePoint Onlineを使ったポータルサイトには、これまで紙の掲示板やメールで全社に伝えていた新商品情報、社内報に加え、新たに売上状況や目標に対する推移、主要なプロジェクトの進捗などがリアルタイムで分かる情報が追加された。これは、管理職が素早い経営判断ができるようにと新設したもの。さらに、支店別の売上進捗を全社員に公開するなど、社員が業績の進捗を“自分ごと”として捉えられるよう工夫した。

Photo 移行後の全社ポータルのイメージ

 これまでNotesで開発された約1000個ものデータベースについては、類似のものを集約した上で、約50のデータベースをポータルに移行。Notesは1年間、閲覧用として残し、移行はしないものと決めた。

 これは、使うかどうかをユーザー一人ひとりに聞いてもらちがあかない上、それが個人最適にすぎないことから決断したという。移行プロジェクトを率いた赤城乳業 情報システム部門の課長を務める吉橋高行氏は、「この決断があったから、短期間での移行が可能になった」という。

Photo Notesは移行後1年間は閲覧用として存続させ、約1000個のデータベースは移行しないことを決めた

 このように、“過去を整理し、必要な情報を可視化して追加”することで、自社の方針や商品、業績に対する社員の理解がより深まったのも効果の1つというのが吉橋氏の見方だ。

 なお、移行に当たって社員教育を重視したのも重要なポイントだ。「いくら、いいソリューションを導入しても、ユーザーが使えなければ意味がない」という考えのもと、座学で基本を学び、ハンズオンで試す2部構成のトレーニングを実施。300人の社員に対し、全国8会場で合計23回のトレーニングを展開したという。

“どこでも決裁”でスピード経営を加速

 スピード経営に効いたところはほかにもある。稟議の処理と会議の日程調整がスムーズになったのもその1つだ。稟議の決裁は、「1日、遅くても2日以内」で済ませるルールになっていたが、クラウドへの移行前はモバイル対応ができていなかったため、外出先の対応が難しかったという。Office 365への移行後は、時間や場所を選ばずスマートフォンで確認し、決裁できるようになった。

 会議の日程調整に時間がかからなくなったのも、スピード経営につながっている。部署ごとに予定表を構築していたNotes時代は、他部署のスタッフを交えた会議をするとなると、問い合わせと調整だけで2〜3日かかってしまうこともざらだったと吉橋氏。移行後は、全社に共通の予定表が導入され、素早く会議を設定できるようになったという。

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