「パブリック」と「プライベート」を“いいとこ取り”したクラウド戦略の行方Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年03月07日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

聞けなかったパートナーエコシステムへの力の入れよう

 今回のEnterprise Cloudの機能強化における最大のポイントを挙げるならば、「ホステッドプライベートクラウドサービスの拡充」である。

会見に臨むNTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティングサービス部門の栗原秀樹部門長

 それは、「機能強化されたEnterprise Cloudによるホステッドプライベートクラウドサービスは、私どものこれまでの経験と実績を踏まえて、他の競合サービスと比べても、最もユーザーニーズに即した構成になっていると確信している」との栗原氏の発言からも明らかだ。さらに同氏は、「お客様に最も最適な“プライベートクラウド・アズ・ア・サービス”を提供したい」とも強調した。

 こう聞くと、NTT Comはこれまで展開してきたAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどとのパブリッククラウドサービス市場での戦いを避けたようにも受け取れるが、実はAWSやAzureも企業向けにはVPN(仮想プライベートネットワーク)などで個別に対応しているケースが多く、実質的にはホステッドプライベートクラウドサービスを展開している。つまり、今後の企業向けサービスはホステッドプライベートクラウドが主戦場になると見ていい。今回のNTT Comの発表はそれを見越したものといえる。

 さらにNTT Comのサービスには、AWSやAzureにはない通信事業者ならではの世界26カ国・地域に展開するIPネットワーク網をはじめとしたネットワーク機能におけるアドバンテージがある。そう考えると、グローバルの企業向けクラウドサービス市場において、NTT ComのEnterprise Cloudが今後AWSやAzureと互角に渡り合う日が来るかもしれない。

 ただ、今回のNTT Comの会見を聞いていて気になる点もあった。クラウドサービス事業を展開するうえで重要なポイントとなるパートナーエコシステムに関する話が全くなかったことだ。もちろん、同社はクラウド事業において「パートナーソリューションプログラム」を展開しており、120社を超えるパートナー企業が参加するエコシステムを形成している。ただ、今回の会見ではその点への言及はなかった。

 あくまでサービスの機能強化に関する発表ということかもしれないが、例えばAWSやマイクロソフトがクラウドサービスに関する発表を行う際には、必ずパートナーエコシステムに関する話が張り合うように出てくる。その意味で今回のNTT Comの会見には少々“温度差”を感じた。ぜひ同社にはあらためてパートナーエコシステムへの力の入れようも語ってもらいたい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ