IoTを推進するには、社内のデータ連携だけではなく“社外とのデータ連携”という観点も必要という。現在把握しているデータを分析しているだけでは、インパクトのある示唆は得られない。
むしろこれまで把握していなかったデータにこそ、新たなビジネスの可能性が眠っているためだ。そのためには、「オープンであること」が非常に重要なポイントとなる。これはインフラやプラットフォームの選定においても、念頭に置くべき点である。
「われわれは『つながらないことが最大の悪だ』と考えています。利用するシステム間で相互につながるためのAPIが公開されているのが望ましいですね。これからの時代は“独自フォーマット”じゃダメなんです。APIが公開されていないと、つなげるための煩雑さが増しますから。
つながっているモノ同士が大きな価値を生むという意味で“API経済圏”という言葉もあるくらいです。どれだけたくさんのAPIを備えていて、どれだけのシステム、業務プロセス、データ、人とつながっていけるのかという点が、今後のシステムにおいては重要な要件になっていくでしょうね」(八子氏)
クラウドやビッグデータなど、過去にもさまざまなITトレンドがあったが、IoTはそれとは大きく異なる点がある。生活の中でクラウドやタブレットが当たり前のものとなった今、以前よりも業務部門の人間がITを理解しやすくなっているため、“現場主導”でプロジェクトが進んでいく可能性があるのだ。
「今は“シャドーIT”や“情シス飛ばし”が起こりやすい時代です。現場では情シス部門の知らないうちにデータベースが動いていて、ある時突然『会計データとつなげたい』といわれてびっくりする――といったケースが増えるでしょう。シスコの営業も『情シスではなくLOB(Line of Business=業務部門)に行け』と言われているくらいですからね。IoTを分からない、やれないと言っていると『情シスはいらない』とどんどん飛ばされて、IoTに関与できなくなっていきますよ」(八子氏)
では、情報システム部門はIoTに対してどう動くべきなのか。八子氏の考えは「積極的に現場に関与していくこと」だ。プロジェクトのスタートから関わることで、情シスの価値を発揮できるのだという。
「『モノやデータをつなげる』という発想でシステムを見れば、大体の場合、つながっていないところだらけなんですよ。ただ、何でもかんでも金をかけてつなげればいいというわけでもないので、最も効果的な部分を見極めてアーキテクチャやデータ連携の構造を決める。そして、パイロット版として理想像を作り、全体をそれに近づけていくようなロードマップを作るのです。
それをIoTプロジェクトと称して情報システム部門がやればいい。『IT側が現場の課題を知らない』という声も聞かれますが、工場に行ってつながっていないところはどこか探してみるだけでも理解度は高まるんですよ。FA化されていても、そのデータを人が見て分かるようになっていないのであれば、つながっていないということですからね」(八子氏)
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