ダイハツの基幹系システムは、生産系を担う富士通機と販売形を担うユニシス機という、2台のメインフレームを中心に構成されている。トランザクションデータを中心とする、膨大なデータを格納していたが、ユーザーはそのデータに直接アクセスできず、別の業務系サーバを通じてデータを参照できるだけだったという。
その結果、ユーザー部門が独自にデータを加工するようになり、マクロも乱立。かえってシステムのブラックボックス化が進み、データのマネジメントはおろか、業務とシステムのつながりが誰にも分からなくなってしまったのだ。
また、IT部門の業務フローにも問題があった。基本的に業務部門からの依頼ありきで動く体制であり、要件定義なども業務部門が行っていた。IT部門はそれを言われるがままにシステム化していた。朝田さんも「システムを作ることが目的になっており、まるでシステム製造工場だった」と振り返る。
そうして2013年、組織を「現場IT」と「オフィスサポートセンター」に分けることで現場とのつながりを強めた。現場ITとなった情シスは、各部署でシステム構築のプロジェクトに参加。業務部門に籍を置いて実務を行いながら、自ら要件を書いてシステムを設計、開発するようになった。いわば、IT部門の中で“攻め”と“守り”の2役を作った形だ。
しかし、この体制に問題がないわけではなかった。運用中心のオフィスサポートセンターについては、どうしても減点方式の評価となり、現場ITの人間よりも評価が低くなりがちだった。
一方の現場IT部門も、評価が高く現場の知識が身に付くものの、情報システムの知識は現場では学べない。ましてや、通常3年間かけて覚えさせていた知識が一瞬で身に付くはずもない。どのようにIT部門として育成するかが課題になっていたという。
そこでダイハツが出した答えは、両者の部署を完全に分けることだった。現場ITだった情シスは各業務部門に所属、オフィスサポートだった情シスは運用専用の部隊になり、子会社化も予定している。
組織を完全に分けたことで、両者の役割分担はさらに明確になった。現場に入り込み、エンドユーザーに近づき、ニーズをくみ取る「現場IT」、そして各部門を俯瞰してシステムの構築や連携を行う「オフィスサポート」。インフラやデータベースの統合を通じて、データ活用の活性化を狙うのも彼らの仕事だ。
スキルの問題を解消するために、両者の人材を流動的に入れ替えることも検討している。「一般職からリーダー、マネジャーとキャリアアップをする中で、現場とインフラを定期的に回遊させる人事施策が必要だと思っています」(朝田さん)
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