IoTと並んでIT業界で大きな注目を集めている人工知能。この技術は今後、情報システム部門の業務にどのように関わってくるのか、情シスはその日に備えて何を学んでおけばいいのか。
Googleの人工知能が囲碁の世界チャンピオンを打ち負かしたニュースは、とても大きな注目を集めました。コンピュータは既に、チェスや将棋の対戦でプロ棋士に勝利していますが、囲碁の世界ではあと10年は無理だろうといわれていたからです。その理由は、チェスや将棋に比べ、囲碁は打ち手の選択肢が桁違いに多く、コンピュータの圧倒的な計算力を使っても最適な手を見つけることが難しいから。にもかかわらず、勝ってしまったことから大きな話題になったのです。
人間が行う囲碁の対局は、「読み」と「大局観」で打ち進めていきます。「読み」は「こう打つと、相手はこう打ちかえしてくるだろう」という予測のことです。一方、「大局観」とは、石と石の配置や全体の形から「こちらの方が優勢だ」などの形勢を判断する能力のことで、トップ級のプロ棋士はこの大局観が抜きんでて優れているのだそうです。
Googleは、すぐれた「読み」と「大局観」を手に入れるため、コンピュータにプロ棋士たちの3000万種類にも及ぶ局面と打ち手を記憶させ、コンピュータの中で何度も対局を繰り返させて碁石がどのような配置だと勝つ確率が高いかを学習させ続けました。そしてプロ棋士に勝る「読み」や「大局観」を手に入れ、勝利することができたのです。
この技術は囲碁に勝つことだけではなく、つぎのようなことでも役立てられようとしています。
その一方で、こんな懸念も生まれています。
「2045年、コンピュータが全人類の知性を超える」
米国の未来学者であるレイ・カーツワイルは、コンピュータの進化の行き着く先には、このような時点が待ち構えており、これをシンギュラリティ(Singularity:特異点)と呼びました。しかし、現時点では専門家の多くは懐疑的です。
確かに、ここ数年の人工知能の進化には目を見張るものがあります。ただ、その成果は、画像認識や音声認識、また、対話応答といった特定の知的作業分野にとどまっており、既に人間の能力をはるかに凌ぐ実力を示しているものもあり、実用化もされています。
しかし、それは人間の脳の機能で行われる知的作業の一部を代替したにすぎず、人間の脳機能の全てを代替するものではありません。そもそも、脳機能やそれを実現している仕組みそのものが、まだまだ未解明なわけですから仕方のないことです。
例えば人工知能には、“自分が何ものか”という自己理解はできません。また、意識や意欲などということになると、それが何か、どのような仕組みで実現しているのかさえ分かりません。これも脳機能の一部であるとすれば、脳の活動を全て機械で実現するのは容易ではないことが分かります。では、そんな人工知能とどう付き合えばいいのでしょうか。
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