人工知能が人々の仕事を管理し、給料を決める――海外ではそんな事例が登場したようです。人工知能は私たちの働き方をどう判断し、何を基準に給料を決めるのでしょうか。
この記事は成迫剛志氏のブログ「成迫剛志の『ICT幸福論』」より転載、編集しています。
“OpenStackSummit Austin”の会場で、人工知能を手掛けているグローバルIT企業の方から面白い話を聞いた。なんとその会社では、人工知能が従業員の給料を決めているのだそうだ。
まだ給料の全てを人工知能が決めているのではないようだが、それでも既に人工知能の判断によって、給料が上がった従業員がいるとのこと。
もともと人事制度として全ての従業員が個々人の保有するさまざまなスキルとそのレベルを登録しているといい、最近始まった人工知能活用で、人工知能が全世界の従業員のスキルとレベルを読み込み、判断し、給料の調整を行っているということだ。
中には、直属の上司が知らない間に、人工知能が給料を上げたケースがあるそうだ。ちなみに人工知能が給料を下げるということはしていないようである。でも、これも「いまのところは」ということだろう。
ということは、近い将来、全ての人の給料を人工知能が公平に決めるという時代が来るのかもしれない。ちょっと想像力を働かせて未来を予想してみよう。
つまりは人工知能が、各担当ポジションの業務内容と必要なスキルを判断し、人工知能が人材のスキルとポテンシャルを判断し、それらをもとに配属を決定する。そして、担当ポジション毎に給料が決められるということになる。給料は、過去の成果によって決まるのではなく、現在の担当業務によって決められるということである。
待てよ。ということは、上司は要らなくなるのではないだろうか?
と、ここまで考えてくると、人材は各企業に所属するのではなく、巨大な人材プールとしておいて、各企業の人工知能が必要な人材を人材プールから選ぶようになってもよさそうだ。
複数企業の人工知能が欲しいと判断する人材が重なった場合には、オークション方式とする。こうすると、需要の高いスキルを持った人材が給料が高くなるということなる。
人材プールということは、なんだか派遣会社のようでもあるが、この場合にはそもそも企業に所属している従業員がいないので、全員が派遣社員ということになる。いや、全員が個人事業主と考えればよさそうだ。
でも、これではチームワークが生まれないので、やはりうまくいかない気がする。というよりも、そもそもこんな世界になってしまって良いのだろうか?
思い起こせば、オルタナティブブログでの僕の最初のエントリー「コンピュータに命令され、仕事する人間」(2009年3月13日掲載)も、同様にコンピュータに支持される人間の話題であった。今回想像する未来は、そのエントリーの延長線上にありそうだ。
いずれにしても、ICTで人間が幸福になれないような世界にはしたくないものだ。
SE、商社マン、香港IT会社社長、外資系ERPベンダーにてプリンシパルと多彩な経験をベースに“情報通信技術とデザイン思考で人々に幸せを!”と公私/昼夜を問わず活動中。詳しいプロフィルはこちら。
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