38年前の新人がいまに伝えたい、たった2つの必要なことハギーのデジタル道しるべ(2/2 ページ)

» 2016年05月13日 08時00分 公開
[萩原栄幸ITmedia]
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新人に必要なたった2つのもの

 38年の経験から、筆者は次の2つだけが新人に必要なものだと考えている。

その1:全ての人に対して素直であれ!

 ある時、2人の新人を指導したことがある。同じ年齢だが、一人は高卒で営業していた中途採用のA君、もう一人は東京大学を卒業したばかりのB君だ。彼らにシステムエンジニアやプログラマーとしての基本的な考え方やシステムスキル、セキュリティの考え方を教えたが、彼らの行動はまるで教科書にあるような典型的なパターンを見せた。

 B君は「その程度のことは大学で学んでいます」という態度を示し、A君は全てが初めての経験として素直に話を聞いてくれた。すると、たった1年で大きな差が生じた。当然ながら驚異的な成長を示したのはA君である。情報処理技術者の試験を簡単に突破した。B君は「研究がしたい」と勉強したものの試験に落ち、周囲の先輩からは「わがまま」のレッテルを貼られて共同作業自体が困難になってしまった。

 筆者もB君をフォローしたが、結局は「大手のシンクタンクに誘われました」と言って退職した。その後、B君を中途採用したシンクタンクでも彼の扱いに苦労したと聞く。B君は半年でそこも辞め、風の便りでは零細IT企業の課長職として細々と営業の仕事をしているらしい。

 いくら素質が高くても、それをうまく成長させるのは本人次第である。ベテランの先輩なら、新人に「まずは素直に黙々と仕事をこなし、実績を積み重ねよ」とアドバイスしてほしい。そして、これが最も難しいことであるのも伝えるべきだと思う。

その2:仕事に関係ないと思っても全方向に好奇心を持て!

 特に技術系などは顕著だが、このことは全ての職種で同じだと感じる。机上で知っていてもそれを創意工夫し、実践して失敗を繰り返しながら這い上がれる人間の多くは、好奇心が旺盛だ。新人なら、どんなことでも貪欲に好奇心を持ってチャレンジすべきだと痛切に思う(もちろん違法なものや危害を与えかねないものなどはNGだが)。

 その理由は、一見して関係のないように思えることが、意外な場面で強みなるからだ。「知ることは人間の幅を広め、品性を持って他人と接する」と筆者も先輩に言われたことがある。逆に言えば「無知は罪悪」となってしまう。知らないといっても恥では済まない行為を平気でしてしまうからだ。

 例えば、以前に最高裁のWebサイトで掲載された判例では、職員が絶対に公開してはいけない「氏名」「住所」などの個人情報をあるソフトで黒く「上塗り」をしていた。人間の目には見えないが、ソフトで“塗った”だけなのでソフトを使って元に戻せる。これではどうにも言い訳できない。しかし、いまでもこういう「無知は罪悪」となってしまうケースが多く発見される。

 現在では多くの管理職が難しい立場にあるようだ。管理職自身もまだまだ半人前だが、新人を育てないといけない。もし「社命だし、それなりの戦力にさせないと……」と考えているなら、それは「傲慢」である。

 いくらベテランでも、「新人たちの背中を軽く押してあげるのが精一杯」ということもあるし、それ以上はできない。それでも気が付く新人は気が付き、ベテランの講師を尊敬する。自分の力が60点だと思っていても、受け止める人の採点によって0点にも100点にもなるわけだ。もし読者の皆さんが新人を教える立場になったら、ぜひ自分なりのコツを掴んでがんばってほしい。「あなたにしかできない」との評価を獲得してほしいと強く願っている。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。

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